No.102 「ジーン・ディクソン ―「ジーン・ディクソン効果」とは?」

榎本海月の連載

ケネディ暗殺を予言

ジーン・ディクソンは前回紹介したエドガー・ケイシーと同じく、近現代のアメリカで活躍した予言者のひとりである女性だ。ノストラダムス、ケイシー、ディクソンの三人を「世界三大予言者」と呼んだこともあるようである。
なんと言ってもディクソンを有名にしたのは、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ暗殺事件を予知したことだった。アメリカ中の誰も予想しなかったこの悲劇を、彼女はずっと前から「ダラス」という地名込みで予知しており、大統領のまわりの人たちに警告していたが、防ぐことはできなかった、とされる。
このような実績によって人々は彼女の言葉を信じ、大統領であるニクソンさえも彼女の客としてその予知を求めたと言う……。

「ジーン・ディクソン効果」

さて、その偉大な予言者であるはずのジーン・ディクソンの名を冠した言葉がある。それは「ジーン・ディクソン効果」というもので、内容としては「人は予言が当たった時のことはよく覚えているけれど、外れた時のことは忘れる」。
つまり、ディクソンの予知は実際には無数にあって山ほど外れているのだが、数少ない的中した予言であるケネディ暗殺のことは忘れず、そのことが彼女の名声を高めている、と言うわけだ。
もしあなたが「名高い予言者」というキャラクターを物語の中で出したい時は「本当に当てる予言者」を設定しても良いが、このジーン・ディクソン効果によって偉大な予言者になってしまった人物を登場させても面白いだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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