No.101 「エドガー・ケイシー ―眠れる予言者」

榎本海月の連載

眠れる予言者

エドガー・ケイシーは近代アメリカで活躍した「眠れる予言者」と呼ばれる人物だ。彼の未来予知はオカルト的な色合いが強く、霊能力や超能力の文脈で理解されることが多いようである。
ケイシーが自らの超能力に気づいたのは、言語障害を患ったことがきっかけであったという。これを治療するために催眠療法を受けたところ、眠った状態のままで他者と話をすることができる、ということがわかった。しかも、彼は寝たままで人の健康を回復するための手法を教えることができたのである。以後、ケイシーはこの能力を活用して活躍し、名声を獲得していく……。
ケイシー曰く、催眠状態の彼はアカシックレコードというこの世のあらゆる情報が存在する場所にアクセスすることができた。だから病気の人の治療法もわかるというわけだが、ここにもう一つ独特の考え方がある。人々は魂を進化させるために転生を繰り返しているのだが、病気はその試練のひとつとして起きるものだ、というわけでいかにもオカルチックだ。
あらゆる情報にアクセスできるわけだから、催眠状態のケイシーは当然未来予知もできる。それによると、1960年代(本人は1945年に亡くなっている)になると伝説のアトランティス大陸が浮上する代わりに日本列島他が海に沈み、またエジプトのピラミッドに隠されていた人類史の秘密が明かされる、という。これらの予知が外れたのは言うまでもない。

未来予知と催眠

予知者としてのケイシー本人を信じるのは難しい(学のない彼がさまざまなアドバイスをすることができたのは若い頃に読書家であったからだという指摘もある)が、現代ファンタジーなどの予言者・助言者的なキャラクターとしては大いに参考になる。催眠状態以外に、どんな状況で未来予知をしたら面白いだろうか?


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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