No.75 「マキャベリ ―『君主論』とマキャベリズム」

榎本海月の連載

時代に翻弄される

マキャベリはルネサンス期のフィレンツェで外交官として活躍した人だ。「君主論」の著者として、そしてここから端を発する価値観「マキャベリズム」のルーツにある人物としてよく知られている。
彼が頭角を現すのは、前回紹介したサヴォナローラによって、フィレンツェの支配者だったメディチ家が追放されてからのことだ。共和政においてマキャベリは軍事・外交の責任者に任ぜられた。
そこでマキャベリはフランスや神聖ローマ帝国、ローマといった周辺国家との間の外交に奔走する一方で、軍事制度の改革(傭兵中心から農民による軍隊へ)にも着手し、成果を挙げた。ところがそうこうしているうちにメディチ家が戻ってきてしまったので、マキャベリは職場を追われてしまったのである。
以後、マキャベリはしばらく隠遁の時代を過ごした。しかし、何もしなかったわけではない。この頃に『君主論』をはじめとする著作を次々と残している。ただ、当時彼の名声を高めたのは喜劇『マンドラゴラ』の執筆であったという。
やがてマキャベリはメディチ家との関係を修復し、再びフィレンツェで活躍を始める。ところがそこから10年も経たぬうちにまたしてもメディチ家はフィレンツェより終われ、親メディチ家とみなされたマキャベリも失脚。今度は復活の目はなく、失意のうちになくなってしまった。

マキャベリズムとは?

マキャベリは『君主論』の中で従来存在した理想的君主のイメージを批判し、そのようなあり方に固執すれば国が滅びるとした。そして、君主は臣民に恐れられるべきで、そのためには残忍な行為も有効であり、信義や誠実を守っても無駄であると語っている。
このような君主のあり方は実の所前からあったし、マキャベリを批判するものさえ同種のやり方を行うことはあったが、マキャベリが本にしたことで「マキャベリズム」と呼ばれ、また批判の対象として注目されるようになったのであった。
ともあれ、主人公のライバル、あるいはダークヒーロー的スタンスの主人公の振る舞いとしてマキャベリズムは大いに参考になる。しかし、実のところマキャベリズムが常に成功するわけではない(敵を作り、孤立することにつながりかねない)ことは意識しておくべきだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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