No.73 「ガリレオ・ガリレイ ―それでも地球は……?」

榎本海月の連載

観念ではなく実用へ

「それでも地球は動いている」の言葉でよく知られたガリレオ・ガリレイはルネサンス期に活躍した学者であり、近代科学を切り開いたうちの一人とされる。
フィレンツェの小貴族の血筋に生まれた彼はピサ生まれで、一時期フィレンツェに住まい、長じてピサ大学に学んだ。しかし環境に満足できなかった彼は独自の学問も続け、ピサ大学卒業後は母校あるいは他の大学で講師を務め、また貴族に仕えたりをしながら研究を進めた。
この時代、学問の主流だったのは哲学的・観念的なスコラ学であったが、ガリレオはそれでは満足しなかった。彼は若い頃から貨幣に含まれる金や銀の比率を天秤によって図る「小天秤」の手法を発見するなど、実用的な学問を志向したのである。
そんな彼は当時発明されたばかりの望遠鏡を活用して天文学の研究も推し進め、当時主流だった天動説(地球を中心に他の星が動いている)ではなく、地動説(中心にあるのは太陽で、地球も動いている)をこそ主張した。この時に聖書と地動説の矛盾なども主張したせいで教皇庁に異端視され、最後には幽閉されてしまった。その後失明し、そのまま亡くなるが、一方で幽閉後にも研究に打ち込んだという。
なお、彼については有名な伝説が二つある。一つは「ピサの斜塔から重さの違う物体二つを落として、重さで落下速度は変わらないと証明した」という話で、もう一つは冒頭でも紹介した「それでも地球は動いている」と最後まで地動説を主張したとされる言葉だ。しかしこれ、前者は伝説に過ぎず、後者は後世の伝記作家による創作であるという。

過渡期の人

ガリレオには過渡期の人という側面が強いように思う。ここまで紹介した実用的学問を進めたことや、地動説で既存価値観と衝突したことだけでなく、論文をラテン語ではなくイタリア語で書いて庶民にも届くようにしたこともそうだ。ルネサンスという新しい価値観が生まれる時代の中で、ぶつかりながらも新しいことをしようとした人なのだ。これはドラマチックな物語の主人公に相応しいキャラクター性だと思うのだが、どうだろうか?


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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