No.46 「ピーリー・レイス ―地図はオーパーツか?」

榎本海月の連載

謎の地図を残す

ピーリー・レイスは16世紀前半、オスマン帝国の提督として活躍した人物である。彼の時代、オスマン帝国は最盛期を迎えており、その海軍は地中海で諸勢力を圧倒する勢いを誇っていた。ピーリー・レイスはその海軍の一員として活躍したが、最後には敵前逃亡の疑いで処刑されてしまっている。
  しかし、ピーリー・レイスという男を語る時には海戦よりも探索・探検の方が先に立つ。彼は数々の海洋探検で名を残し、当時発見されてまだ時が経っていない新大陸について多くの地図を残し、海洋案内書『海事の書』を書いた。
何よりも注目されるのがいわゆる「ピーリー・レイスの地図」である。これは20世紀になってからオスマン帝国の首都・イスタンブールのトプカプ宮殿で発見されたもので、本来はインド洋と大西洋の両方を描いたと思われるが、現存するのは大西洋のそれしか残っていない。発見まもない時期の新大陸が驚くほど精巧に記されているのは驚くべきことだ。
ただ、もっと驚かされる特徴がこの地図にはある。なんと、当時発見されていないはずの南極大陸(らしきもの)が描かれているのだ。ピーリー・レイスは南極大陸に辿り着いていたのか、それはどうやってなのか。もしかしてこの地図はオーパーツ(本来あるはずがないアイテム)なのか……としばしば話題になる。なお、この説については「地図上で南極大陸に見えるのは実際は南アメリカ大陸である」とするのが有力であるようだ。

地図の秘密とは

歴史学的な正解はともかく、物語的には「その時代に描かれるはずのない地図」というものにワクワクする人は多いはずだ。
地図の制作者はなんらかの手段(魔法か、超科学か、それとも単に超人的体力か?)によって現地にたどり着き、地図を作ったのだろうか。それとも、古代人などが作った地図を見つけ、それを元にして地図を描いたのだろうか。あるいは実はいかにも曰くありげな地図は間違いで、間違いであることに意味がある(正しい地図を計算で導き出せたり、あるいはその間違った地図が異世界に行く手段になったりする?)のだろうか? いろいろ考えることができそうだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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