No.21 「プロメテウス ―火をもたらしたもの」

榎本海月の連載

火をもたらした者

プロメテウスはギリシャ神話に登場する神々の一柱である。といっても、ゼウスやアポロン、アテナといったこの神話における主流派の神々、オリンポス神族の神ではない。むしろ彼らと敵対するティタン神族の神である。彼の兄弟には、後に世界を支える役目を与えられたアトラスがいる。
ティタン神族はその長であるクロノス(ゼウスの父)のもとで世界を支配していたが、オリンポス神族との戦いに敗れ、タルタロス(冥界)に封印されてしまった。ところが、プロメテウスだけは自由だった。なぜなら、彼はゼウスが勝つと予想し、オリンポス神族に味方していたからだ。
しかし、そんなプロメテウスがやがて悲劇に見舞われる。彼は人間たちに魅了され、過酷な暮らしを続ける人間のためにさまざまな手助けをした。その代表的な出来事が、「火」を渡したことであった。これによって人々は闇に怯えることもなくなったし、温かい料理を作ることもできるようになったのである。
だが、ゼウスはプロメテウスの行いを許さない。彼を捕らえ、岩山に鎖で縛り付け、大鷲を放った。この鷲はプロメテウスの肝を突くが、夜になるとプロメテウスの傷は治ってしまうので、永遠に拷問が続くことになる……。プロメテウスの解放とゼウスとの和解は、ヘラクレスが大鷲を射落とすのを待たねばならない。

裏切り者ではあるが

プロメテウスは裏切り者である。ティタン神族を裏切り、またゼウスをも裏切った。しかしその裏切りの動機がわかりやすく、また特に後者においては物語を大きく動かすことにもなっているので、あまりマイナスのイメージはない(それによって辛い目にあっていることも大きい)。
彼のような「裏切り者」は物語の背景設定として便利で面白い。裏切り者はなんのために、何をもたらしたのだろうか。それによって人々の生活や世界はどう変わったのだろうか。考えてみよう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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