No.10 「ペルセウス」

榎本海月の連載

メデューサ退治の英雄

ギリシャ神話には綺羅星の如き英雄たちが存在するが、その中でも目立つうちの一人がペルセウスだ。
この神話では珍しくないことだが、彼はゼウスの子である。アルゴスの王女ダナエは「孫によって殺される」という神託を信じた父によって幽閉されていたが、そこにゼウスが黄金の雨となって降り注ぎ彼女と情を交わしたため、ペルセウスが生まれた。王は二人を海へ流し、たどり着いたセリフォス島で親子は暮らした。
ここでペルセウスの冒険が始まる。母を守るため、見るだけで石になる怪物ゴルゴーンと戦うことになってしまったのだ。ペルセウスは神々に与えられたアイテムを活用し、ゴルゴーン三姉妹のうちメデューサを退治した。鏡になる盾で見れば石にならずに済んだので、鎌で首を切り落としたのである。なお、このメデューサの血からは翼の生えた馬、ペガサスが誕生したという。
また、帰り道でペルセウスはもう一つの冒険をこなした。ペガサスで空を飛んでいたところ、エチオピアの王女アンドロメダの危機に遭遇したのである。彼女はちょうど、怪物の生贄に捧げられたところだった。ペルセウスはメデューサの首の魔力で怪物を石にして彼女を救うと、そのまま妻にしてしまった。また、戻ったセリフォス島では王(もともとこの男がダナエに言い寄ったのが始まりだった)も石にしてしまっている。
のちにペルセウスはアルゴスの王になった。故郷に戻ったところ、予言を恐れた王(ペルセウスの祖父)が逃げ出したからだ。ところがその後、ある競技会でペルセウスが投げた円盤が観客に当たって殺してしまう事件が起きる。それが祖父であったという。

典型的神話ヒーロー

予言、怪物との戦い、神による助力、不思議なアイテム、そしてロマンスと出世。ペルセウスの物語には血湧き肉躍る神話的冒険のエッセンスがいっぱいに詰まっている。ギリシャ神話における典型的エピソードと言っていいだろう。
しかし、現代を生きる私たちの感覚では物足りないところも多いはずだ。神に頼らぬ本人の試行錯誤、登場人物の葛藤、ヒロインの活躍などだ。それはギリシャ神話が劣っているということではなく、時代の違いである。そのような不足に感じる部分を補うため自分なりに考えることが必要であり、ペルセウスは良い素材になる。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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