No.9 「ニコラ・テスラ ―生き方が不器用な天才」

榎本海月の連載

交流を普及させる

テスラは現代人の生活にも大きく関わる、送電網の発展に大きく貢献した人物だ。彼は発明王エジソンに勝利した人だが、その知名度はおそらくエジソンには及ぶまい。
彼は旧ユーゴスラビア、現在のクロアチア共和国の小さな町に生まれている。幼い頃から神童として知られ、いくつかの発明を行っている。
そんな彼は電子工学に興味を持ち、オーストリアの工科大学に進学した。そこで「グラムの発電機」と出会った。これは水蒸気などの力を使えば発電機となり、電気を流せばモーターになるという電気と磁力の関係を勉強するにはもってこいの道具だった。その実演を見たテスラは直流ではなく、交流を使えばもっと効率的な発電や電力の使用ができるのではないかと思いつく。早速教授に相談するが、彼の考えは先進的すぎて、理解されなかった。それでもテスラは試行錯誤の末に交流を使った効率的なモーターを作り上げた。
その後、テスラはエジソンの会社で働いたが、辛い日々が続いた。当時のエジソンは直流による送電網を支持しており、作る製品も直流を前提にするものばかりだったからだ。ついにテスラはエジソンと決別し、自らの研究所を立て、交流システムの普及に務めた。こうして直流と交流のどちらを採用されるかの論争は白熱し、お互いを貶めるようなビラが配布されたり、デモンストレーションなどが行われた。結局、交流によって送電網が整備されることとなった。直流は電圧を上げるのが難しく、電気を長距離に送るのには適さなかったのである。
直流交流戦争に勝利したテスラであったが、大企業の圧力で特許料を受け取れず、裕福な暮らしにはいたらなかった。その後も研究を続けたが、壮大な研究は完成には至らなかった。晩年は友人の死や自身の事故により寂しいものとなっている。

生き方は不器用だったかもしれないが……

偉大な発明を成したテスラであるが、社会的な成功とは言い難い人生を送った人であることはすでに見てきた通りだ。どうしてそうなったのだろうか。
それは彼の世渡り下手のせいであったかもしれない。大金持ちの娘に言い寄られても独身を通したエピソードなどもそれを感じさせる。一方のエジソンは宣伝上手で、彼はわざわざ交流を使った電気椅子を作らせて「交流は危険」というイメージを定着させようとしたほどだ。
しかし、結局送電網において世界的に採用されているのは交流である。また、テスラの名前は単位として残ったり、あるいは電気自動車メーカーの名前として残ったりしている。優れたものは結局残る……これはキャラクターの信念、あるいは「作中の過去に起きた出来事」として取り入れると面白いのではないか。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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