No.6 「ジャンヌ・ダルク」

榎本海月の連載

救国の聖女

15世紀前半のフランスはイギリスとの百年戦争の最中にあった。そんな中、突如として現れたのがフランスの救国の乙女、ジャンヌ・ダルクである。ただの村娘が国を救ったという伝説はあまりにも有名だが、彼女の物語が悲劇であることも忘れてはいけない。
神の啓示を受けたとして生まれ故郷ロレーヌのドンレミ村を出たジャンヌは、オルレアン市攻防戦の最中にあった王太子シャルルのもとに駆けつけた。このオルレアンが落ちればフランスはいよいよ滅亡の淵に立たされる状況において、ジャンヌは大いに活躍してイギリス軍をオルレアンから追いやった。彼女が「オルレアンの乙女」と呼ばれる由縁である。活躍の背景として、ジャンヌの信仰心が兵士たちを刺激したこと、また戦争の慣例にとらわれない戦い方があったとされる。
その後、シャルルが王として即位する儀式に立ち会うなど栄光に包まれるジャンヌだったが、戦いの中でイギリス側に捕らえられてしまう。この時彼女にかけられた疑いは「異端」であり、その背景には「神の地上の代理人である教会を通さずに神の啓示を受けた」と主張するジャンヌの存在が教会にとって邪魔だったことがあるという。
激しい責めを受けたジャンヌは最終的に異端を認め、火刑に処される。しかし後世、彼女は聖人として認められたのである。

「おいしい」キャラクター

ジャンヌは本人としても、あるいはモチーフとしても、実にさまざまな作品に登場するキャラクターだ。ただの村娘が一国の運命を変えたことも、フランスに見捨てられたに等しい悲劇的結末も、また聖女であると同時に異端でもある(彼女の異端認定は現在も別に撤回されたわけではない)ことも、いくらでも料理しようのある「おいしい」要素だ。あなたは彼女のどんな側面に注目してキャラクター化するのだろうか。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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