No.3 「曹操」

榎本海月の連載

天下三分

始皇帝の秦帝国が滅んだ後、楚漢戦争を経て前漢が成立し、前漢のあとに後漢が立つ。その後漢も滅んだ後、中国は再び戦乱の世となった。その中で三つの国が台頭し、相争う時代がやってくる。いわゆる三国志の時代で、魏、呉、蜀の三国が覇権を取り合う。そのうちの魏を、事実上創建したのが曹操という人物だ。
彼の父は後漢の有力な宦官の養子だった。名門の家柄でありながら曹操は素行が悪く、評判は悪かった。その一方で兵法は熱心に勉強し、やがて乱世の英雄になると評価した人もいる。
二十歳で宮仕えをはじめ色々な官職を務めた後、一武将として黄巾の乱の鎮圧に参加。手柄をあげ、代官歴任後に首都に戻って近衛部隊長をした。その頃に、西方の武将董卓が天子の廃立を行い、権力を掴むとともに首都は大混乱となった。曹操は一度首都を離れたが、同じく名門の出の袁紹を盟主とする董卓討伐軍が各地で蜂起すると兵を率いて参加する。董卓の死後、曹操は後漢最後の皇帝・献帝を擁立すると袁紹を倒して中国のかなりの部分を制圧する。
しかし、南方に位置する呉の孫権、また荊州にいた劉備らを討伐するべく遠征した際には赤壁の戦いで敗れてしまい、天下統一はならなかった。それでも彼の魏が最大勢力であったことは間違い無い。しかし、皇帝となる前に没している。皇帝になったのは息子の曹丕の時代からだ。

多才の人

曹操は巨大な国家を作り上げた(あるいは奪い取った)人でもあるが、個人としても大変な才能の持ち主でもあった。教養深く学問を愛し、特に詩人として名高い。戦場でも詩を忘れなかった、と言うほどだ。囲碁や音楽なども嗜んだほか、有名な兵法書『孫子』に注釈を加えて『魏武注孫子』を作っている。さらに曹操は己だけでなく他者の才能をも愛し、彼の周囲には優れた人材が集った。才能あふれるリーダーが描きたいのであれば史実、そしてそれを脚色した物語である『三国志演義』の中の曹操を観察すると良い。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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