No.1 「アレキサンダー大王  ―東西をつなげた大王!」

榎本海月の連載

東西をつなげた「大王」

紀元前、東欧のマケドニア(バルカン半島)に生まれた王。
マケドニアは父のフィリッポス2世の頃から勢力を拡大していて、西のギリシャとの関係を深めていた。若き日のアレキサンダーも父の計らいで当時最高の知識人アリストテレスの教えを受けている。また暴れ馬ブケファラスを乗りこなした逸話も有名。
父の跡を継いで王になった彼はギリシャを始め周辺勢力を支配下に置くと、兵を率いて東のペルシアへ向かい、ペルシア王ダレイオス3世を倒した。この際、ペルシアに支配されていたエジプトを解放しており、ファラオの後継者とみなされている。
ペルシアを倒してもアレキサンダーの遠征は終わらず、インドにまで至ったが、マケドニアを遠く離れての遠征、また異民族と共存する大帝国の建設には、特に旧来のマケドニア人やギリシャ人からの反発が強く、たびたび内紛もあった。一つには、大帝国をおさめるためのシステムや儀礼をペルシア方式で統一しようとしたところにも原因があったようだ。
最終的にアレキサンダーが熱病で死ぬと、彼の家臣たちは自らこそ後継者なりと宣言して内紛を起こし、アレキサンダーが残した世界帝国は崩壊してしまう。しかし、東西をつないだ偉大な王の伝説は後世にまで残り、またごく短い間とはいえ世界帝国が生まれた事で東西の文化が互いに伝えられ、新たな文化を生み出していくことになる。

偉大な王のモデルとして

あなたが物語の中に「偉大な王」を登場させたいなら、アレキサンダー大王ほどモデルに相応しい人物はそうそういない。実績の大きさはもちろん、部下たちに世界の果てまで行こうという夢を見させたカリスマは、物語の登場人物として適したものだからだ。
しかし、アレキサンダーは完全無欠の人物ではない。彼についていけず離れたものもいただろうし、死んだ後にまで部下たちを自分の理想に従わせることもできなかった。そんなところも物語の人物に使いやすい。主人公の主君として登場させたり、あるいは戦うべき敵として登場させると物語のスケールが広がることだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

タイトルとURLをコピーしました