原作:あさのますみ 作画:畑健二郎『それが声優!』(発行はローソンHMVエンタテイメント、販売は4巻まで一迅社、5巻のみ講談社、2015〜2017)
初出:同人サークル「はじめまして」の同人誌(2011〜2017)およびWebサイト連載
声優は辛いことも多いけれど
声優になったばかりでアルバイト三昧の一ノ瀬双葉、同じく新人だけどアイドル声優を目指してキャラ作りに余念のない萌咲いちご、新人ながら子役時代の経験がある小花鈴。ユニット「イヤホンズ」を組むことになった三人の新人声優としての道のりは波乱万丈で、なかなかうまくいかないことばかり。それでも「それが声優!」を合言葉に頑張っていく……。
声優という職業に華やかなイメージを持つ人も多いだろうが、実際にはかなり大変……というのは、アニメの世界などにちょっと興味を持つ人なら知っているのではないか。毎年どんどん新しい声優が現れる中で仕事は決して多くなく、アルバイトをこなしてどうにか生きていく日々の中で夢を諦めるものも続出する。イベントをやっても人が集まらなかったり、作品の媒体が変わる時に別の声優に役を奪われたりということも珍しくない。そのような声優世界のリアルを、それでもコミカルに、そして生き生きとしたキャラクターの魅力で読ませてくれる作品だ。
実体験を物語にする
この作品の原作者、あさのますみ=浅野真澄は本物の声優である。彼女の目から見た声優の実像……ということで、展開に説得力がある。一方でキャラクターが「立って」いて魅力的で、実録・エッセイとして描いたなら出なかっただろうな、と思わせるパワーがある作品なのも事実だ。
「これは本当にあったんだろうな」「これはアレンジしているな」と思わせるエピソードが色々混ざっていて(実際どうだったかは原作者のコメントとして書き込まれていたりもする)、事実(ノンフィクション)から物語(フィクション)を作り上げる様が参考になる。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。