No.59 原作:ONE・作画:村田雄介『ワンパンマン』

榎本海月の連載

原作:ONE、作画:村田雄介『ワンパンマン』(集英社、23巻刊行中、2012〜)
初出:『となりのヤングジャンプ』(2012〜)

あらゆる相手がワンパン!

怪人が次から次へと現れて人類を脅かす世界。これに敢然と立ち向かうヒーロー、サイタマがいた。スキンヘッドでマント姿の彼は一見して全く強そうに見えない。しかしいざ戦えば彼に勝てる者はいない。どんな相手も一撃(ワンパン)で倒してしまうのである。故にこの作品のタイトルは『ワンパンマン』であるわけだ。
ただしサイタマ、いまのところ作中ではワンパンマンとは言われない。作中序盤、趣味でヒーローをやっていた頃には全く謎の人物扱いであったし、ヒーロー協会に所属したあとつけられたのは「ハゲマント」。……ハゲにマントでは全く格好良く思えない。アクションを中心としたかっこいいところ(作画担当の迫力あるタッチと相まって、決めシーンは壮絶なまでにカッコいい?)と、どこか間の抜けたコミカルな展開が入り混じっているのがこの作品の全体的な雰囲気ということになる。
原作担当がWeb漫画として発表していた作品(現在も連載中)を、作画担当が加わって新たにリファインしてWEB連載している作品。

シンプルなアイディアを生かすために

「どんな敵も必ずワンパン」というシンプルで爽快なアイディアだけなら、おそらく誰でも思いつく。しかし、これをきちんと物語として成立させるのは簡単ではない。本作の場合、序盤はなんでもワンパンで解決してしまいサイタマのインパクトで引っ張りつつ、やがて物語の中心が別のキャラクターへシフトしていく。
彼の押しかけ弟子であるジェノスの苦闘、ヒーロー協会の事情、そして所属する個性的なヒーローたちの姿だ。強いが絶対的とはとても言えない彼らの個性がしっかり描写されるからこそ、全く異次元のところにいるサイタマの存在が目立つ……という作りになっている。

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『ワンパンマン』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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