No.50 原作:四葉夕ト・作画:小川亮『パリピ孔明』

榎本海月の連載

原作:四葉夕ト、作画:小川亮『パリピ孔明』(講談社、3巻刊行中、2020〜)
初出:『コミックDAYS』(2019〜)

公明、パリピになる!?

パリピとは「パーティピープル(パーリーピーポー)」、つまりパーティーなどではしゃぐ若者のこと。そのパリピと『三国志』の名軍師・諸葛孔明がなぜ結びつくのか? それは、五丈原で病死したはずの彼が、気づいたら若々しい姿で現代日本にいたからだ。それも、パリピたちがハロウィンで大騒ぎ中の渋谷に、である。
古代中国の格好がコスプレ扱いされたこともあって騒ぎに溶け込めた孔明は、駆け出しのシンガーソングライター・月見英子と出会い、彼女を主君と定める。そして、歌手として成功するという彼女の夢を叶えるため、またライバルたちの妨害を払い除けるために、あらゆる策略を駆使するのだ……。

異世界転移と三国志!?

『三国志』は有名な作品なので、さまざまな切り口でエンタメ作品に活用されてきた。横山光輝の漫画に代表されるような大作もあるし、前回紹介した『孔明のヨメ。』のように外伝・スピンオフ的な作品もある。あるいはキャラクターや要素だけを持ってきた作品もある。
その中で本作はキャラクターを活用するタイプの『三国志』作品だが、どこか最近流行りの異世界転移的な雰囲気があるのも注目ポイントだ。つまり、古代中国からやってきた諸葛孔明が現代の文化と出会うところに面白みがあり、彼の(本来なら何十万もの軍勢を動かすのに使われていた)知性が「パーティーを盛り上げる」「一人の少女をスターダムにのし上げる」ことに使われるというミスマッチが面白い。また、孔明は実に賢い男なので、あっという間に現代日本やパリピ文化に順応してしまうし、彼を「孔明のコスプレ」「三国志マニア」だと思う周囲の人々との勘違い・ズレも読んでいて楽しい作品だ。

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パリピ孔明 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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