No.44 原作:伊勢ともか・作画:久園亀代『代闘士ハイコの事件簿』

榎本海月の連載

原作:伊勢ともか 作画:久園亀代『代闘士ハイコの事件簿』(講談社、1巻刊行中、2020~)
初出:『モーツー』(2020~)

裁判の真実は決闘にあり

物語の舞台は剣と魔法のファンタジー世界だ。しかし、一つ特異な文化がある。裁判で証拠なく誰に罪があるかわからないとき、決闘によって真実を決めるのだ。とはいえ決闘など普通の人間にできるはずがないため、しばしば専門のプロが立てられる。すなわち「代闘士」だ。
旅の代闘士ハイコは優れた剣の技と洞察力を持つが、食事をすることを忘れて行き倒れかけるようなどこか抜けたところもある。しかし、一度事件に出逢えば、瞬くうちにその真実を見抜き、その上で代闘にも勝利してみせる。彼はなにかを探しているようなのだが――。

ファンタジーとミステリー

各エピソードのクライマックスには代闘すなわちバトルが待っているが、メインになるのは「謎」であり、ハイコが調査と推理によりそれを解く展開である。つまりこれは変則的なミステリーであるわけだ。
実は異世界ファンタジーにミステリーを組み合わせる試みはそれなりに前例がある。「魔法があれば何でもできるからミステリーなど成り立たない」と思う人もいるかもしれないが、実は必ずしもそうではない。そもそも多くのファンタジーものにおいて魔法は万能の力ではなく制限があるから、ミステリーを成り立たせることは可能だ。現実の社会もカメラや携帯電話のようなミステリーの成立を困難にさせる要素がいくらでもあるが、今も数々のミステリーが書かれているのがいい証左だ
大事なのは「特別な要素がある世界で魅力的な謎、面白い謎解きを考えるにはどうしたらいいか」を考えることだ。本作の場合は魔法でなにができてなにができないかをきっちり決めることで、その問題をクリアしている。

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『代闘士ハイコの事件簿』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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