No.37 速水螺旋人『男爵にふさわしい宇宙旅行』

榎本海月の連載

速水螺旋人『男爵にふさわしい宇宙旅行』(新潮社、2巻刊行中、2017〜)
初出:『月刊コミック@バンチ』『月刊コミックバンチ』(2016〜)

理想の乙女を求めて!

惑星スパロウランドを領地とするミハルコ男爵は、わずかな供を連れて宇宙を旅している。その目的は理想の乙女、アースライト姫と出会うこと。ところが彼女の噂やら仕えていたロボットやらは出てくるが、本人の手がかりは全く見つからない。
なのにトラブルは次々巻き起こって、正義感の強いミハルコは困っている人を見捨てられないのである。そこで毎度毎度の大騒ぎ――というのが本シリーズの大まかなあらすじである。ヘタレと言われたりはしつつもやる時はやるミハルコと、そんな彼にことあるごとに同衾を迫る吟遊詩人のノンシャラン、計算娘(ロボットのこと)のランパチカらのデコボコ旅は実に陽気で楽しい。

宇宙騎士道物語

基本的には騎士道物語のフォーマット(正義感のある貴族あるいは騎士が、目的を持って旅をしつつ、女性や農民といった困っている人を救うため、トラブルに飛び込んでいく)なのだが、これを現代でストレートにやってしまうとちょっと大時代的で素直には受け取ってもらいにくい。
そこで本シリーズでは『スターウォーズ』のような古典的な遠未来SF世界を舞台としつつ、パロディ要素も入れ込んでユーモアたっぷりに語ることで、古臭さを避けている。そこが上手いし、参考にもなる。
また、これは速水螺旋人作品全体の特徴でもあるのだが、キャラクターたちが計算高かったり、機転が効いたり、生き汚なさを発揮したりでピンチを切り抜ける展開が結構多い。こういう、「自分ならではのキャラクター性」のようなものを持っていると、独自の個性、ウリになるのでクリエイターとして有利だ。

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『男爵にふさわしい宇宙旅行』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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