No.30 藤栄道彦『最後のレストラン』

榎本海月の連載

藤栄道彦『最後のレストラン』(新潮社、16巻刊行中、2011〜)
初出:『コミック@バンチ』(2011〜)

ダメ人間コックと偉人たちの出会い

フランス料理のレストラン「ヘブンズドア」。園場凌が父から引き継いだはいいものの、今ひとつ流行らないから考えるのは店をやめることばかり。アルバイトの女性二人もそんな彼を呆れつつ見守っている。――ところが、そんな「ヘブンズドア」には時々不思議な事件が起きる。歴史上の人物が現れ、奇妙な注文をするのだ。どうも彼あるいは彼女は死ぬ直前に時間移動して現代にやってくるらしく、園場の料理を食べると満足して姿を消す。果たして彼らは成仏するのだろうか……?
当初はすっかり自信とやる気を失っていた園場だが、次々と妙な人々に出会い感謝され、またジャンヌ・ダルクや安徳天皇のような消えなかった過去の人、あるいは現在の人でも交流を持つ相手が増えていく中で、まっとうに成長していく――かと思いきや、作中でも結構はっきり言われてしまうような超ネガティブ&ダメ人間っぷりはそんなに変わらず。「ヘブンズドア」は今日もにぎやかだ。

歴史的事実をどう料理する?

基本的に各回ひとりの偉人がやってきて、その迷いや悩み、苦しみが園場の料理で解消される、というのが本シリーズのテンプレートだ。
偉人はよく知られたキャラクター性で描かれることもあれば、意外と知られていない真実の顔をクローズアップすることもあり、かと思えば有名人や有名なフィクションキャラクターと重ねて描写される(ガンジーを『サザエさん』の波平と重ねたのが個人的なお気に入り)こともあって、実にバラエティー豊か。時代物などで史実アイディアを取り込んで描くとき、どんな料理法があるか……という手本として大いに役立つはず。

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『最後のレストラン』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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