No.29 原作:もちんち・作画:深山靖宙『魔法使いの印刷所』

榎本海月の連載

原作:もちんち、作画:深山靖宙『魔法使いの印刷所』(KADOKAWA、4巻刊行中、2017~)
初出:『電撃G’sコミック』(2017~)

魔法世界のコミケ!?

コミックマーケット帰りの主人公・紙谷美香(ミカ)が、いつの間にかファンタジー異世界に迷い込んでしまう。どうにか元の世界に帰りたいが、そもそも魔法を使えることが前提の世界なので生きていくだけでも大変。そんな彼女が唯一持っていた魔法の才能は「コピー(紙の複製)」。そしてこの世界では魔法書が非常に重要で、多くの魔法使いは自分の作った魔法書を発表したがっているがその機会が限られていた。
誰かが書こうとしている希少な魔法書の中には元の世界に戻るためのものが存在しているかもしれないが、いまのままではそれを見つけるのは難しい――。そこで、自分の才能を活かすため、そして元の世界に戻るため、ミカは驚くべきイベントを立ち上げる、皆が魔法書を持ち寄るイベント、「マジックマーケット」だ。いつか役に立つ魔法が見つかればとミカはマジケを運営するが、トラブルが次々起きて……。

「ネタ」をいかに物語にするか

いわば「ファンタジー世界にコミケがあったら」というお話で、コミケならではのあるあるネタ(体調不良で倒れる人々など)やその時々の時事ネタ(オリンピックによるコミケ中止とか)も折り込みつつ、うまくファンタジー風に解釈して物語に仕立てている。
また、このシリーズはもともと原作者がTwitterにあげたごく短い漫画を、普通の漫画に近いものへ広げているのだが、その変化もクリエイター志望者には大いに参考になるはず。短い一発ネタと、十数ページの漫画では入れ込むべき要素も違うし、面白さの種類も変わってくる。特に本シリーズは実は主人公が違う(元作品ではどちらかといえば冷静な青年だが、ミカは喜怒哀楽が激しくツッコミ気質の女性)など、連載作品のための脚色というものをダイレクトに確認できるようになっているので、見比べがおすすめ。

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『魔法使いの印刷所』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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