No.25 大nani/吉緒もこもこ丸まさお『ゲーミングお嬢様』

榎本海月の連載

大nani/吉緒もこもこ丸まさお『ゲーミングお嬢様』(集英社、単行本1巻は2021年刊行予定)
初出『ジャンプ+』(2020~)

お嬢様ゲーマーの熱い日々

祥龍院隆子はお嬢様ゲーマーである。お嬢様言葉を駆使しながら頭に血をのぼらせまくってゲーム(作中では特に格闘ゲーム)に興じる。彼女が通う聖閣東芸夢学園は日本中のお嬢様ゲーマーが憧れる場所で、隆子こそはこの学園の全一(最強くらいの意味)お嬢様である。彼女の前には次々と強敵があらわれるが、隆子は一歩も退かないのだ――。
なにがなんだかよくわからないかもしれないが、以上の説明には一切嘘がない。『ゲーミングお嬢様』は紹介したとおりの物語である。「お嬢様ゲーマーってなに」や「お嬢様学校でゲームをやってるとかありえないでしょ」などというツッコミはまったく無粋だ。作中ではそういう事になっているし、読者に余計なことを考えさせない勢いがある作品なのである。

むしろミスマッチが面白い

本作はいわゆるA+Bの方法論で作られている。「ゲーム(特に格闘ゲームのような、近年eスポーツとして注目されている分野)」と「お嬢様」だ。熱中しているゲーマー特有のものとしてしばしば戯画化される下品だったり無礼だったりする言動を、お嬢様的な少女に言わせる。
その結果、たとえば「ブチギレだ」が「ブチギレですわよ」になる。実際のセリフはこんなものではなくもっと独創的で無茶苦茶なので、是非自分で読んでみてほしい。お嬢様の言動としてはおかしいが、「お嬢様ゲーマー」だから問題ない(少なくとも作中では)。このミスマッチ具合こそが本作の面白さであり、A+Bの方法論の手本になる。つまり、要素を混ぜたときにうまれる矛盾や不格好さは、ときに魅力にもなる、ということなのだ。
なお、本作はまず原作者の作品がネットで話題になり、後に作画がついて改めて連載されというスタイルである。その原作者バージョンがなんとも言えない魅力を放っているのも本作の特徴なので、一度見てみてほしい。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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