No.23 『宇崎ちゃんは遊びたい』

榎本海月の連載

『宇崎ちゃんは遊びたい』(KADOKAWA、4巻刊行中、2017~)
初出:ウェブサイト『ドラドラドラゴンエイジ』(2017~)

後輩はかわいいが、ウザい!?

大学生の主人公、桜井真一は比較的寡黙で、顔が怖めで、あまり友達がいないタイプ。別にそのことに特別の寂しさも感じないため日々自分なりに楽しくキャンパスライフを過ごしている――が、ここに問題が一つ。後輩の宇崎花が何かと絡んでくるのだ。
高校の水泳部からの付き合いである後輩は、黙っていれば可愛くて巨乳の美少女として通じる。しかし、口を開けばとにかくウザい。よく喋るし、自分勝手だし、しつこく絡んでくる。桜井は何かと彼女の世話をすることになってしばしばうんざりもするのだが、ちょっとした仕草やかわいい部分を見せるところにドキリともするのだった。
物語は当初、宇崎が桜井に絡んで遊びに行こうとしつこく迫るところから始まる。やがて宇崎がバイト先の喫茶店に押しかけてきて一緒にバイトをするようになったり、主人公の世話を焼く友人が登場したり、宇崎の家族が二人の様子を気にかけるようになったりしながら、どんどん話が広がっていく。二人の関係はどうなるのだろうか……?

ヒロインの魅力がいのち

本シリーズはいわゆるラブコメだ。それも、ゼロ年代に流行ったハーレム物ではなく、十年代の主流のひとつである「ちょっと変わったヒロインひとりと関係を深めていく」タイプのラブコメである。このタイプの物語ではとにかくヒロインが魅力的でなければ話が始まらない。
本シリーズのヒロインである宇崎は実に厄介で、身近にいると大変だろうなあと思わせるキャラクターだが、先述したように時々垣間見せる様子がかわいい。何より、本人はなかなか認めないが主人公のことを好きで好きでたまらないのが主人公と宇崎以外(読者含む)には見え見えで、そこがまたかわいい。このようなキャラクター造形は大いに参考にしてほしい。

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『宇崎ちゃんは遊びたい』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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