岡崎城の歴史
前回紹介した八丁味噌の製造元「カクキュー」さんから少し足を伸ばしますと、いまは広大な公園のようにとなっている敷地の中に、岡崎城の天守閣が見えてきます。
岡崎城といえば、松平一族の居城として有名です。松平一族は戦国時代において三河を代表する国衆の一つであり、特に松平清康の代には最盛期を迎えました。しかし清康は暗殺によって倒れ、以後松平一族は駿河・遠江の今川氏に支配されるようになっていきます。
その孫の松平元康の代になりますと、そもそも岡崎城に入ることさえできず、城には今川が送り込む城代が入っていました。父祖の地を他者に好きなようにされるということは、松平とその家臣団にとって大いに屈辱だったことでしょう。やがて今川氏が織田信長に敗れて衰退していく中で元康は岡崎城に戻り、以後独立大名として発展していきます。そう、この松平元康こそがのちの徳川家康の姿です……。
公園でのんびりと
今の岡崎城は緑豊かな公園のような場所になっていますので、私のような人間には敷地の中でのんびりしつつそのような歴史に思いを巡らせるだけでも十分楽しい場所です。また、敷地内には鉄筋コンクリート製の復興天守と、「三河武士のやかた家康館」という歴史資料館がありますので、それらに展示を見ることでも歴史に触れることができます。
犬山城のように当時の姿を大いに残している城(城跡)もいいのですが、この岡崎城、あるいは名古屋城のようなコンクリート天守にもそれぞれの味があって割と個人的には好きだったりします。また、城跡しか残っていない場所も日本各地にありますね。そのような場所で「かつてはどうだったんだろう」と歴史に想いを馳せるのも、想像力を養うのにはおすすめです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。