国宝のお城
現在、日本の各地にお城が残っており、観光名所になっています。
しかし、それらの多くは近年になって建てられた城だということをご存知でしょうか。かつて戦国時代から江戸時代にかけて建てられた城は壊され、あるいは天災や戦火に焼かれ、ほとんど現存していないのです。
江戸城も天守閣は早くに失われ、いま「いかにも江戸城っぽい」建物と認識されているのは天守ではなく「櫓」と呼ばれる構造物だったりします。
その中で数少ない今も天守閣がしっかり残る城が、今回紹介する犬山城です。尾張徳川家康の重臣、成瀬家が代々守ったお城でした。国宝になっている城としても有名ですね。先日、ニチマのバスハイクで行ってきました。
犬山城はなんと言っても美しいお城です。特に自然の風景との関係性が絶妙で、ぜひ城が立つ断崖の向こう、川を挟んで眺めていただきたく思います。大変に絶景です。しかし一方でこの美しさは城の機能とも不可分であることは忘れないで欲しいところです。犬山城の天守閣は断崖に立つため、背後を気にせず守りを固めることができます。いざとなれば川から脱出することだってできたかもしれませんね。
ただその分、住んで快適なお城ではありません。小高い丘の上にあり、そもそも天守閣自体が急な階段(というよりは梯子!)しかない高い建物です。ちょっと日常生活はできません。実際、普通天守閣というのは住むものではなく、基本的には倉庫、いざというときの立てこもり場所だったといわれています。織田信長だけは住んだらしいですが……。犬山城にも大名の御殿があったはずです。
観光街の色もいろいろ
犬山城のお膝下には観光街があります。犬山城が古くからの名所なもんで、観光地も年季が入っているのか……と思うと、あにはからんや。いかにも昭和の観光地的お土産物屋もありつつ、通りの中に入っていくと伊勢のおかげ横丁を思わせるような江戸時代風の作りをした建物がずらりと並んで雰囲気たっぷり。
それでいて売っている品はソフトクリームだったりタピオカだったり飛騨牛握りだったりと今時の若い人をバッチリ押さえていて、頑張っているな、と感じさせる場所でした。こういう「観光地ごとの雰囲気」も、物語の舞台や青春もの・職業ものの要素として面白いポイントではないかと思うのですがいかがでしょうか。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。