第4回「伊雑宮」

コラム

伊勢神宮の別宮

数年前、個人的に伊勢を旅したことがあります。もちろん伊勢神宮には内宮外宮の両方行きましたし、皇女が「斎王」として神を祀った斎宮の地にも赴きました。ただ、その辺は有名どころなのであえて今回はちょっと別のテーマへ。
今回紹介したいのは「伊雑宮」という神社です。これは伊勢神宮(内宮)の「別宮」というポジションにある神社の一つなのですが、多くの別宮が伊勢神宮の内部や伊勢市内にあるのに対して、これはかなり遠く離れているものの一つです。行こうと思ったら伊勢から電車に乗って結構時間がかかります。そのままずっと電車に乗っていくと志摩スペイン村にたどり着きますので、いっそ行こうか……と思ったのですが体力に限界がありまして諦めました。

神様がまだいる場所

実際どうしてそこへ行ったのかと言えば尊敬する先生に勧められたのが半分、別宮をコンプリートしたいのが半分(結局できていないのですが)だったのですが、行って見ると何とも言えない感覚を覚えました。
伊勢市内はやっぱり観光地で、土産物屋なども多くあったのですが、伊雑宮周辺はまったく地方の、人々がごく当たり前に暮らしている場所と思えました。しかし道を進んでいくとぱっと鬱蒼とした森が現れ、なるほど霊験あらたかなものを感じたものです。
また、伊雑宮には「神田」があり、そこでとった米が奉納されるとともに、「磯部の御神田」と呼ばれる田植えの儀式が毎年行われています。神田の近くにはその記念館があって、ボランティアの女性がなにかと親切に説明してくれたのを覚えています。昔と比べると祭の維持も大変なのだなあと思わせる雰囲気もありつつ、見せてもらったビデオの中には今でもしっかり祭りと神々が息づいており、非常に感じいるものがありました。
伊勢に出かけるのは難しい人も多いでしょうが、皆さんの暮らしのそばにまだ神様がいる痕跡は結構残っているかもしれませんよ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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