ご挨拶
私、榎本海月は愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院の小説クリエイトコース(旧ライトノベルコース)で多年に渡って担任講師を務めてきました。
その都合で、たびたび名古屋を中心にした観光地や学術施設などに引率で赴くことがあり、「これは創作のために役に立つのでは」というところもたびたび見てきたのです。もちろん、他の仕事の関係、そしてあくまで私的に出掛けて「これは」と思ったこともありますよ。
これまでもわずかながらTwitterなどで紹介することはありましたが、今回、まとめてドーンと紹介したく思います。内容の都合上、普段の連載と違う口調になることをお許しください。
大須商店街でデスゲームを見る!
1回目から学校関係でないことをお許しください。旬の話題なので、逃すわけにはいかないのです。
先日、名古屋指折りの繁華街である大須商店街に出かけてまいりました。お目当ては「大須シネマ」で上映していた映画『人狼ゲーム デスゲームの運営人』を見ること、であります。
こちら、11月から封切りの映画ですが、名古屋では本稿執筆の12月1日時点では通常のロードショーは行っておりません。なのになぜ……と申しますと、クラウドファンディングのリターンとしてトークショー付き特別上映が行われたのですね。私は11月28日午前の部に申し込みまして当日観賞した、というわけです。また、当日はプレゼントとして人狼カード一式およびサイン入りのカード1枚もいただきました。写真はそれです。
この作品はいまやパーティゲームの定番になった「人狼ゲーム」をモチーフにした小説シリーズ最新作の映画版でして、原作者の川上亮先生が初めてメガホンを取ったものになります。私は以前からのファンであるとともに、榎本事務所としても以前専門学校日本マンガ芸術学院の方にも特別講師としてお呼びしたり、朝日ノベルズで編集を担当させていただいたりとお付き合いがありまして、名古屋の回には是非伺わねば、と参った次第です。
会場の大須シネマは小規模ながらも新しくこざっぱりとした施設で、「大須の町に映画館を復活させたい!」と意思のもと、頑張っておられる映画館。居心地が大変良かったですね。名古屋グルメの手羽先で有名な「世界の山ちゃん」の料理が中で食べられる……ということでしたが、今回はお預け。次は試してみたいですね。
人狼ゲームの「枠」を破る!
本題の映画の方はどうだったか? 大変楽しめました。誘拐されたり志願したりした若者がデスゲームで殺し合い、疑心暗鬼になる……というデスゲームものの面白さは当然保持しつつ、それだけではないのが見どころ。
デスゲームの管理人はどういう立場で何をやっているのか、そして安全圏から高みの見物をしているはずの彼らが巻き込まれたらどうなるのか……と、枠を広げる楽しみを与えてくれるのです。
また、人狼ゲームをモチーフにするとある程度ストーリー展開が固まってくるのですが、それをあえて揺らし、ズラし、最後の怒涛の伏線開示(それでいてあえてほのめかす程度の伏線があるのも心憎い展開です)につなげる――最後まで楽しめるサスペンス感たっぷりの面白さでした。
上映後は監督・原作の川上先生、若い俳優陣の中で渋い演技によって全体を引き締めた「鬼頭」役のウチクリ内倉さん、人狼ゲームに詳しくアドバイザーを務めた児玉健さんによるトークショーが行われ、そちらも大変楽しいものでした。参加者から質問を募る時間もあり、そこで私が口にした仮説の評判が良かったのが嬉しかったですね。
『人狼ゲーム デスゲームの運営人』は熊本ではまだ見られるということで、お近くの方はコロナ対策などバッチリしつつ是非一度どうぞ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。