No.4 原作宮崎克・漫画吉本浩二『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』

榎本海月の連載

原作:宮崎克・漫画:吉本浩二『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』(秋田書店、全5巻、2011〜2014)
初出:『週刊少年チャンピオン』(2009〜2014)および『別冊少年チャンピオン』(2012〜2013)

「漫画の神様」の横顔

本シリーズは手塚治虫の関係者――編集者、同業者、アシスタント、家族――などへの取材を通して「手塚治虫の仕事場」に迫り、「漫画の神様」と呼ばれていた人が一体どんな存在だったかを克明に掘り起こすものである。
タイトルにある通り、本シリーズは秋田書店の『週刊少年チャンピオン』に連載されていた医療漫画の金字塔『ブラックジャック』執筆・刊行にまつわるエピソードを中心に、手塚治虫がどんな人物だったか、どんなふうに仕事をしていたのかを描く作品だ。
実際には『ブラックジャック』以外のエピソードもかなり多く、手塚治虫が生涯をかけて挑戦したアニメにまつわるエピソードや、彼の息子でヴィジュアリストの手塚眞にまつわるものなど、実に多様な逸話が収録されている。

とんでもなくて魅力的な人々

本書を創作志望者のための漫画として紹介するのはなぜか。漫画の神様の生き様の物語だから――では必ずしもない。ハッキリ言って、手塚治虫の振る舞いは現代のクリエイターが真似していいものではないからだ。
作中でも編集者が、先生は漫画家の手本なんだから締め切り破りの連続はやめてくれ……と迫るシーンがある。そのくらい、手塚治虫は大量に仕事を抱え、それを無茶苦茶なスケジュールでこなしていた。それができたのは超人的な才能のおかげでもあったが、明らかに出版社に迷惑をかけてもいたので、現代のクリエイターは真似てはいけない。
では何を参考にするべきなのか。それは手塚治虫の周りに集まるすごい人たちの生き様であり、振る舞いである。キャラクターとして「立って」いる人たちが山のように出てくるのだ。
その中には時代が許した人、時代が許したエピソードだなあというものもたくさんある。印刷所に無理を通すために「砂を入れて壊すぞ」と脅す出版社の社員も恐ろしいし、実家が火事になって帰ることになったアシスタントに手塚が名刺に「飛行機に乗せてやってくれ」と裏書きして渡した(そしてそれを空港に持って行ったら本当に帰れた!)などという話も凄まじい。もちろん手塚自身の話もすごいもの、面白いものばかりである。キャラクターを作る時の一つのソースにしてほしい。

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『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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