◇14回「起源神話」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

始まりを語る物語

神話には、「この世界はどうしてこうなったのか」「どうして成立しているのか」を紹介する物語としての機能がある。そのため、世界各地の神話に「起源神話」と呼ばれる物語が含まれている。世界は、生命は、死は、自然現象は、どうして生まれたのか、何が起源だったのか、を語る物語だ。
これらの物語はあまりにも神話的・幻想的なので、現実を舞台にする物語はもちろんのこと、普通の異世界ファンタジーでもちょっとそのまま採用するのはちょっと難しいかもしれない。
しかし、架空の神話を作る時の参考にするのはもちろんのこと、「主人公が夢に見ること」「現実離れした異界で遭遇する超常的な現象」「神がその力を示す異常な出来事」としては十分使えると思われるので、ここで紹介する。あるいは「本当は何か別のことが起きたのでは」と想像するのも面白い。

面白い起源いろいろ

起源神話はあまりにも多様に存在するので、ここでは特徴的なものをいくつか紹介する。
例えば、穀物の起源を紹介する神話は大きく2パターンがあるとされる。一つは天界などから種を盗んでくるパターンだ。ギリシャ神話ではプロメテウスがこの役を担ったが、彼は人間に火も与えたためゼウスの怒りを買い、山に繋がれ鳥に食われる罰を受けた。もう一つは女神などの死体から穀物が生まれるパターンで、日本神話では大宜津比売(おおげつひめ)の死体から生まれたことになっている。
また、人間の寿命の起源を紹介する神話に、バナナ型神話と呼ばれる物語がある。これは「人間は石とバナナのうちバナナを選んだから、石の持つ不変性を手に入れられず寿命が生まれた」というもので、世界各地に同種の神話がある。日本神話では美しい花の化身の女神と、醜い石の化身の女神の選択で、花を選んだが故に寿命が短くなったという。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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