第40回「都市のある場所の「いま」「むかし」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

沼地や砂漠に作られた都市

もう一つ、番外編的な話を。「いま」、世界中にいくつも繁栄した巨大都市がある。その都市がある場所が「むかし」どうだったのかってみなさんご存知だろうか? 実はその少ない数が、もともとは人が住むにはあんまりふさわしくない場所だったようなのだ。
わかりやすいのは東京だ。かつて武蔵国の江戸と呼ばれていた頃、そこは江戸湾が入り込んできた入江で、沼や川が非常に多く、今の大都市の面影はありません(交通の要所として結構栄えていたという話はあるが)。しかし、この地にやってきた徳川家康が沼を埋め立て、川を整理し、入江もどんどん埋め立ててて新しい土地を生み出し、「いま」の東京につながる大江戸を作り上げたのだ。
これと同じような事情を世界あちこちで見ることができる。たとえアメリカの首都ワシントンD.C.はもともと江戸のような沼沢地だったというし、逆にロサンゼルスやラスベガスは乾燥地帯・砂漠地帯だったそうだ。もっとスケールの小さな話でも、現在いろいろなところにある地下街はポンプで水を排泄するから現状を維持できているのであって、それをやめたら地下水に水没する、という話を聞いたことがある。

人がいなくなれば?

「いま」私たちが恩恵を得ている都市という空間は、実のところ莫大なエネルギーをつかって人工的に作り上げられ、また維持されている場所なのだ。もし維持のためのエネルギーを失えば「むかし」に戻るしかない。つまり、沼や砂漠に飲み込まれ、多数の人が住むには向かない場所になるのだ。
もしあなたがアフターホロコーストやポストアポカリプスと呼ばれるような、「文明社会が崩壊した後の世界」を描こうとしているのであれば、このあたりを押さえておくと大いに喜ぶだろう。大都市は、文明なしでは大都市ではいられないのだ。
なお、どうしてそんな場所を大都市にしようとしたのかというと、多くの場合は交通の便であろう。他にも広大な空間が用意しにくかったり、別の場所にはすでに都市があったりで開発しにくいなど、いろいろな事情の兼ね合いで都市の場所は決まる。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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