第36回「“むかし”のお茶」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

お茶と生活

お茶を飲む、という習慣を持っている人は非常に多いはず。緑茶、紅茶、ウーロン茶。これを入れたての暑いまま、あるいは冷やして氷を浮かべて飲む。紅茶なら砂糖やレモンやミルクを入れる人が多いが、緑茶は何も入れないのが日本では普通だ(アジア以外では砂糖を入れて緑茶を飲む習慣が広まっているという)。
日常の一息に、カフェインによる覚醒を期待して仕事しながら、食事の友に、そして儀式めいた茶道の主役として。お茶は私たちの生活に欠かせないものといえる。この茶と私たちの関係は「いま」と「むかし」でどう変わったのだろうか。

お茶の歴史

茶は(麦茶のような例外を除いて)茶の木の葉っぱを加工して作る飲料だ。
茶の木の発祥はミャンマーともチベットともいう。そこから周辺に広まったわけだが、特に文化として大いに発展させたのが中国である。神話的には五帝の1人、神帝炎農氏が他の薬と友にもたらしたとされる。つまり、当初は茶を薬として飲んでいたわけだ。『三国志演義』のプロローグでも、貧乏な農家の若者である劉備が老いた母のためにせめてと薬としての茶を求めるシーンが描かれている。それがやがて、6世紀くらいから庶民の文化としても浸透していく。
日本には他の多くの文化と同じように、仏教僧によって持ち込まれた。庶民に受け入れらるにはかなり長い時間がかかっており、江戸時代に後述する煎茶が広まった後のことだ。
古代中国で飲まれていた茶は現在の私たちのそれとはかなり違う。餅茶・団茶と呼ばれる、蒸してから突き固めて塊にしたものを削って煮出し、飲んだものが主であったようだ。やがてさまざまな形の茶が現れる。
私たちが緑茶と呼ぶ、一度熱を加えることで発酵させないで緑のままにするお茶もあれば、途中まで発酵させる半発酵茶(ウーロン茶)も生まれた。なお、紅茶の出現はもっとずっと遅く、ヨーロッパへ輸出されるようになってからのことだ。
緑茶の種類としては、茶の粉末をお湯に溶かす抹茶と、揉んで乾燥させた茶の葉を湯に入れて成分を溶かしだす煎茶に大きく分かれる。「むかし」は抹茶が非常に多かったが、庶民のお茶として広まったのは煎茶であった。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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