◆22回「 一代貴族」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

一代貴族の意味

史実における一代貴族というのは、イギリスにおける貴族制度のことである。この制度の対象になると、男爵の爵位を与えられた貴族として上院議会の一員となるが、その爵位・貴族としての身分を次の代に譲ることはできない。文字通り「一代」の貴族なのだ。
一方で、あなたの作品で貴族制がある世界・地域を登場させるにあたって、一代貴族の制度を登場させるのは悪くない選択肢と言える。その社会にとっても、また物語を作る側としても、一代貴族は便利な存在であるからだ。
まず、社会・国家の側から見てみようか。なぜ一代貴族は便利なのか。これは貴族の数を調整するのに役立つからだ。
貴族の位は成果を上げた人への恩賞として価値があるのはもちろんのことだが、それだけではない。社会や地域によっては「この仕事ができるのは貴族だけ」「ここに入ることができるのは貴族だけ」などの資格になっているケースが多いため、それらの役目を果たしてもらうために特定の人物を貴族に任じる必要があるのだ。
たとえば日本でも長い間天皇と謁見できるのは一定の位を得たものだけであり、そのため本来貴族でないものどころか、象や猫が貴族としての位をもらったことがある。
しかし、必要だからといって無節操に貴族を増やすわけにはいかない。現代でも正社員を増やすと簡単にやめさせられないから企業の経営を圧迫するように、貴族も簡単には増やせない。そこで、一代限りの(そして大抵は領土も付いていない)貴族に任じるということを、適切な恩賞あるいは仕事のための資格として使うわけだ。

物語の中の一代貴族

物語の中の一代貴族はどうだろうか。基本的に貴族社会において異質な存在なので、事件を起こしやすく、また事件に関係させやすいので、やはり使いやすいキャラクターということになる。
生まれが貴族でないから貴族としての振る舞いを知らず、宮廷社会への知識がない。そもそも成り上がりということで周囲が彼を見る目は冷ややかであろう。それでもうまいこと如才なく、あるいは有力貴族の取り巻きになることで適応するものもいるだろうし、孤立したり宮廷社会と距離を置いたりするものもいるだろう。
そもそもどうして一代貴族になれたか、も重要なポイントだ。余程の手柄を立てたか、能力に優れているのか、有力貴族や王族に見込まれたのか。強い野心によって望んで一代貴族になったなら、もっと上を狙うものもいるかもしれない。ちゃんとした貴族になり、さらなる出世を目指すのだ。なんにせよ、いろいろな物語が作れそうである。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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