第33回「洗濯の「いま」「むかし」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

重労働だった洗濯

「いま」、洗濯は非常に手軽になった。全ては高性能な洗濯機のおかげだ。衣服と洗剤さえ入れれば、あとは全て全自動でやってくれる。それでも取り出して畳むところまでは普通やらないといけないが、遠くないうちにあらゆる作業をやってくれる洗濯機が登場してもおかしくない。
しかし「むかし」の洗濯は家事の中でも重労働中の重労働だった。家政婦の中でも、洗濯を担当するのはつらい役目であったという。これが改善されるのには長い時間が必要だった。
最も古くは、そもそも洗濯という概念がなかったらしい。服はダメになったら捨てるものであったのだ。しかし、やがて服を長く使うためにも洗濯するようになる。そこには宗教的な「禊」、浄化の概念が関わっていたようだ。

洗濯の変遷

古典的な洗濯のあり方は、まず水に浸すということになる。汚れが水に溶ければきれいになる。当たり前だ。しかし、ほとんどの汚れはそれだけでは足らないので、刺激を与えることになる。つまり、揉んだり、踏んだり、そして叩いたり、だ。特に叩く場合は棒や石を使うので、服は簡単にぼろぼろになってしまったことだろう。
昭和の風景として、波型に加工された洗濯板をイメージする人もいるかも知れない。布に過度なダメージを与えずに洗うことができるすぐれものだ。しかし、実はあれ、「むかし」というよりは「いま」に属する道具だったりする。発明されたのは18世紀の終わり頃、日本に入ってきたのは大正時代頃であるという。
洗う方法はそれだけではない。熱を与えることで汚れを除去しやすくする方法は古くから知られていた。また、洗剤としても灰や灰汁、植物の汁などがよく使われた。水のない地域では砂を用いたし、毛織物には尿が使われた。アンモニアが効くのだ。やがて石鹸が発明され、合成洗剤が発明されて、現在に至る。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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