第32回「「いま」の火薬は安定性が大事」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

火薬と安定性

火薬は「どれだけ大きな爆発をするか」も大事だが、それと同じくらいあるいはそれ以上に「必要なタイミング以外では爆発しない」ことが重要だ。ちょっとした刺激で勝手に爆発するようでは危なかしくて使えないからだ。だから「むかし」の物語なら火薬庫を攻撃して敵拠点に大ダメージを与えることができるが、「いま」の物語ならちょっとむずかしいかもしれない(とはいえ、燃料なり、弾薬なり、燃えやすいものは近くにあるだろうから結局爆発するだろうが)。
たとえば、ノーベル賞で有名なノーベルが発明したことで知られるダイナマイトは、まさにこの安定性によって評価された爆発だ。小さな刺激で爆発するニトログリセリンという火薬を加工することで、雷管による刺激なしでは爆発しないようにしてしまったのである。このダイナマイトは大ヒットしたが、戦争で使われもした。そのことに心を痛めたノーベルが、平和のために設立したのがノーベル賞である……という。

プラスチック火薬

ちなみに、現代よく使われる火薬の一種としてプラスチック火薬というものがある。といっても、いわゆる合成樹脂のプラスチックでできているという意味ではなく、粘土のように形が変えられる(プラスチックという言葉にその意味がある)ということだ。
塊で持ち運び、必要に合わせて壁に貼り付けたり、小分けしたりして、最大限の効率・効力を引き出すことができるのがウリである。また、熱くなろうが衝撃を受けようが爆発せず、雷管をつけて起動することではじめて爆発するという安定性も、よく使用される理由になっているわけだ。なお、最初のプラスチック火薬を発明したのも、やっぱりノーベルであるという。
ちなみに、プラスチック火薬には「食べられる」という噂がある。実際甘いが、食べると中毒症状が出るので、口にしてはならない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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