◆18回「運送業者」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

社会を成立させる人々

この項目は文字通り「物を運ぶ」仕事の人をイメージして紹介する。
現代社会は流通によって成り立っていると言ってよい。私たちが商品を生活に利用するためには、「原料を生産地から加工地へ」、そしてまた「加工地から商店や手元へ」運ぶ運送業者がいなければ成り立たないのだ。
「むかし」ならこのような動きはごく小さなもので済んだから、専門の業者はそこまでいらなかったかもしれない。しかし「いま」では「地球の裏側から運んでこられた原料を加工してまた別の場所へ」などというのは珍しくなく、専門の業者がいなければ話にならない。
特に現代、ネット通販が一般化してちょっとした日常の生活必需品まで通販で揃うようになったいま、運送業者の重要性は高まっている。社会を成立させるインフラとさえ言えるだろう。また、「むかし」なら各飲食店が店員に運ばせるのが当たり前だった出前が、「いま」はフリーランスの運送業者が店から受け取って運ぶシステムになっているのも見逃せない(社会的にいろいろな問題を生みつつもあるので、その点でも物語のネタになり得る)。
運送業者は多くの場合、さまざまな乗り物を使って運送を行う。船、飛行機、車、鉄道、バイク、自転車……どことどこの間を結ぶのか、何を運ぶのか、急ぐのか急がないのか、で使われる乗り物は違う。飛行機は距離とスピードに優れるがコストは高いし、運べるものも少ない。一方、船は距離に加えて運べる量も多い代わりにどうしても時間がかかる。また、船で運べるのは港までで、そこで荷揚げしてからは陸路をとらなければいけない事情もある。小さな荷物を早く届けるには小回りの効くバイク便が以前から活用されてきたが、近年ではエコの観点から自転車もよく使われる。

危険な運送

ここまでは合法的な運送業者の話をしてきたが、もっと特殊だったり非合法的な運送業者というのもあり得る。
つまり、危険だったり持っているだけで犯罪になったりする品物(銃器、爆発物、薬物……)を運んだり、あるいは侵入が禁止されていたり監視されていたりそもそも危険だったりする場所に荷物を持ち込む業者である。時に人間を運ぶ……つまり脱出させたり参入させたりも仕事の範疇だ。当然危険だが、それだけに報酬はしっかり取る。
主人公たちを運んだり、危険を持ち込んだり、あるいはそもそも危険な運送業者を主人公にすることで、さまざまなドラマが作れそうだ。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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