「むかし」の衣服
衣服は特に技術の進歩の影響を受ける分野だ。人間が生きるために必須の物であるから盛んに作られるが、原料である繊維の調達についても、そしてそれを加工することについても、技術や動力の影響を大きく受けるからである。
「むかし」 の衣服は天然の原料を人間の手で加工することで作られる。一番多いのはなにかしらの原料を繊維にし、紡いで糸にし、織って布にするパターンで、麻や木綿のような植物由来のものもあれば、絹や羊毛のような動物由来のものもある。動物の皮、魚の皮、木の皮などのもともと布状の原料もあるが、これらも適切に加工しなければ使い物にならないことが多い。
衣服のデザインという話になるともっと厄介になる。実際、エンタメの世界において「むかし」の衣服デザインはあまり重視されないことが多いからだ。素材的にも技術的にも(ぴったり体にあったものになりにくいなど)現在の目から見てカッコいいと思える衣服が少なく、現代的デザインの服を着ているケースが多いからだ。この辺はどのくらい嘘をつくのか、自分でコンセプトを決める必要がある。
「いま」の衣服
「いま」の衣服の原料として非常に重要なのは化繊、つまり化学繊維だ。主に石油を原料として作るこれらの繊維は、伸縮性があって衣服を劇的に進化させた。現代の私たちが着ている、体にぴったりとついてくる衣服(特に下着!)は技術の進歩によるものなのだ。
また、産業革命による大量生産がもっともダイレクトに影響を与えたのもこの分野だ。「既製品のシャツ」などという私たちにしてみればごく当たり前の概念が存在できるのも、これ故だ。糸を紡ぎ、また織るという分野でいかに機械が活躍したかについては、たとえば日本なら群馬県の富岡製糸場が世界遺産として指定されたことでもよくわかるだろう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。