◆15回「なげやり・自暴自棄」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

「もうどうでもいい!」

 これはキャラクターの性格の一類型として紹介する。なげやりはいい加減な態度で物事に挑んでいる様子、自暴自棄は失望してどうでも良くなってしまっている様子で、合わせて「(悲劇的な事情などによって)物事に真剣に取り組めなくなってしまっている様子、考えなしの様子」を指すものだと考えて欲しい。その結果、状況的に正しくないことをうすうすわかっていても行動しなかったり、酒や麻薬のような一時的な快楽にのめり込んだり、どうでもいいような些細なことを糾弾したりする。
 このような性格のキャラクターは、主人公の行動を妨害したり、あるいは主人公が救済する対象として登場する。主人公が正しい目標、多くの人が賛同する目的に基づいて行動する時、それを邪魔する人はしばしばこのような心情になっている。「どうせ頑張っても救われないからもうどうでもいい」とか「お前の言動で非常に腹を立てたから、利益よりも邪魔をする方を取る」といった振る舞いだ。
 これらの行動は非常に愚かに見えるし実際にそうだが、なげやり・自暴自棄の状況に追い込まれた人にそれを言っても火に油を注ぐだけだ。多くの場合、やけになった人間と言うのは自分がみっともない振る舞いをしていることも頭の片隅で理解しているから、正論をぶつけても激昂するだけ、というケースが非常に多い。そこで実力で排除するか、あるいは甘言を弄して一旦騙すか、という手法が必要になる。

状況をかき回すもの

 完全に冷静であれば人間はなかなかこのような振る舞いはしないものだが、危機的状況であったり、以前からの不仲があったり、何か非常に悲しいことがあって悲観的になっていたりすれば、簡単になげやり・自暴自棄になるものだ。「嫌いなあいつの邪魔をする」という快感が分かりやすいものだ、ということもあるかもしれない。
 そのため、状況を悪化させたり主人公を追い詰めたりするための手段として非常に有用である一方で、このような愚かな人間をも受け入れ、救ってこそ聖人的なキャラクター、ということもできるだろう。もちろん、「俺にそんなことは関係ない」と排除しても、それはそれでキャラクターが立つというものではある。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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