◆13回「悪人系主人公」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

悪人が主人公で何が悪い

主人公は品行方正の善人でなければならない――などとはどこにも書いていない。多様なエンタメ作品の中には悪人としか言いようがない主人公もたくさんいて、大いに人気を獲得している。特に大人向けの作品で見られる主人公のキャラクタータイプだが、ライトノベル的作品の中にもいないわけではない。
彼らは悪である。他者を害することに躊躇がなく、自分が利益を得ることに貪欲だ。人を騙すテクニックも十分に心得ている。善人では勝てないような相手でも、悪人がそのテクニックを駆使すれば勝ち目が見えるかもしれない。つまり、善人にはできないことができるキャラクターということで、物語の幅を広げるのに大いに有用な選択肢と言えるだろう。

主人公として成立させるために

ただ、悪人系主人公には大きな問題がある。それは、読者から好きになってもらいにくい、応援してもらいにくい、ということだ。これでは主人公としての役目を果たすのは難しい。
そこでさまざまな工夫をする必要がある。
一つの手は「悪人具合をうまくコントロールする」ことだ」。たとえば女子供には手を出さないとか、大悪人だけを食い物にするとか、麻薬や奴隷のような邪悪な所業には手を出さないとか、独自のポリシーを持っているとか、である。しかしこのような悪人は物語のステロタイプとしてよく使われるので、今となってはリアリティが薄いかもしれない。
そもそも「大人向け作品として開き直る」というのも手段である。青年漫画や一般文芸などを見れば、悪人かつヒーローのキャラクターは数多く登場する。ただ、そのような悪人は多くの場合人間的な魅力や茶目っ気などがあって、「悪いが惹かれる」になっていることが多いので、人間・キャラクター観察が必要だ。
バディものなど、別のタイプのキャラクターと組み合わせるのも立派な手段だ。善人と悪人がコンビを組んで一つの目標に挑むような話なら、悪人主人公のキャラクター性を生かしつつ読者には善人の方を応援してもらう、ということができるわけだ。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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