第24回「建物の「いま」「むかし」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

事情に合わせた家

私たちの生活を支える建物(家)もまた、「いま」と「むかし」では大きく違う。
家や建物がどんな構造をしているか、どんな部屋や通路を持っているかは、時代と地域によって本当に色々なので、とてもここでは紹介できない。是非、自分の世界のモデルを定め、調べて欲しい。
それでもいくつかのヒントは紹介できるので、以下に記す。
たとえば家族や集団のあり方が違うから、家の大きさが違う。かつての「大家族は当たり前、労働のための人手として兄弟などが住むのが当たり前」の農民の家などは、「いま」の家のイメージで考えると驚くほど大きい。もし機会があったら合掌造りに代表されるような各地で保存されている「古い農家」を見てみるといい。何人もの人が住み、かつ養蚕業のような内職ができる空間も必要だったので、本当に大きかったのだ。
また、気候に合わせた通気性の違いなども重要だ。暑い場所では通気性のいい建物でないと熱気がこもって住めたものではないし、逆に寒い地域ではしっかりと密閉された部屋を暖炉などであたためないと寒くてたまらない。なお、「いま」の家はエアコンの使用が前提のようなところがあるので優れた密閉性を持っているが、「むかし」の家はそうではないので、異世界転生でエアコンと電源を持ち込んでも効果が出るかはわからない。

家と素材

どんな素材で家を作るのかは非常に重要だ。三匹の子豚は藁と木と煉瓦で家を作ったが、なるほどこの三つは非常に重要な素材である。
さすがに藁で家全体を作ってしまうのは少々原始的にすぎるが、屋根を藁や萱で葺くのはしばしば見るスタイルだ。木は加工しやすく便利で、様々な素材が出てきた今でも好んで使われる。煉瓦は粘土を練って形にするわけだが、火で焼き固めることもあれば、干して太陽の熱で固めることもある。
あと古典的な建材といえば、石と紙だろうか。石は言うまでもなく、重くて、堅牢で、長い時間に耐える優れた素材だ。しかし有用な石のあるところは限られているし、運ぶのも大変で、加工も難しいと、簡単な素材ではない。紙、というのは障子をイメージしている。江戸時代の日本の家は木と紙でできていたからよく燃え、火事に弱かったことが知られている。
ところで、意外かもしれないが古典的に存在する建物の材料がある。それがコンクリートだ。砂利と砂とセメントを水で混ぜて乾かすコンクリートは近代的な建物を象徴する建材だが、実は古代ローマにおいても同種のもの(砂の代わりに火山灰を使ったらしい)が存在した。あなたのファンタジー世界の建物がコンクリートで作られていてもおかしくはない……さすがに鉄筋コンクリートは難しいだろうが、竹などを混ぜ込むと近い効果が得られるという。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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