第23回「「むかし」にはなかった?酒の話」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

醸造酒と蒸留酒

ここまでの数回で酒にまつわる話をしてきた。その締めくくりとして、「むかし」になかった――というとちょっと語弊があるのだが、ある程度技術が進歩しないと人々の口に入らない類の酒がある、という話を紹介したい。それは「蒸留酒」である。
酒は大きくわけると「醸造酒」と「蒸留酒」になる。醸造酒は酵母の力で発酵・醸造させて作る酒で、ここまで紹介してきたビール、ワイン、日本酒は全て醸造酒である。もちろん美味しい酒を作るにはさまざまな技術が必要なのではあるが、発酵・醸造自体は自然にも起きることなので、古代の人々にもできた、ともいえる。
一方、蒸留酒は、その醸造酒に蒸留という加工を行わなければ生産できない酒である。蒸留というのはどういうことかというと、簡単に言えば「沸点の違う二つの種類の液体が混ざっている時、適切な熱を与えることで片方だけを蒸発させ、その気体を集めることで両者を分離させることができる」というものだ。ざっくり言えば、醸造酒に対してこれを行えば、アルコール分を濃くすることができる。これが蒸留酒である。

中世に生まれた酒

たとえばビールを蒸留すればウィスキーになるし、ワインを蒸留すればブランデーになる。日本では米や芋を原料にして蒸留した焼酎がよく飲まれる。蒸留そのものの技術は古代のギリシャやローマではすでに発明されていたようだが、蒸留酒そのものは中世にならないと現れなかった。その担い手になったのは錬金術師である。彼らは金を作り出すための実験として蒸留に着目したのだ。
歴史的にそこまで新しい技術ではないため、もしかしたらあなたの世界にも蒸留酒はあるかもしれない。しかし、もしなかったならば、たとえば優れた技術を持っている組織や集団、あるいは異世界からの転生者が「アルコール分が強くてかなりキく酒」の製法を教える、なんてこともあるかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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