第22回「日本酒の「いま」「むかし」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

神秘の酒

前々回はビール、前回はワインの話をした。どちらも西洋の酒である。とあれば日本の酒の話をしないわけにはいかない……ということで、今回は日本酒の話をしよう。
「いま」、日本酒といえば透明な、澄み切った色の酒である。清酒ともいう。原材料は当然米で、これを米麹で発酵させることで作る。
日本人がいつ頃酒を作り出したかはわからない。米作りと同時期に大陸から学んだのだろうとは考えられているし、有名な『魏志倭人伝』にもその記述がある。また、古代の特殊な酒
として知られるのが「口噛酒」で、これはなんと人間(おそらくは巫女)米を噛み、壺に入れることで酒を作る。唾液の酵素が米のデンプンを糖化し、そこから発酵が始まる……という現代ではとても考えられないが、神秘的な酒である。

清酒と濁酒

以後も日本酒は作り続けられてきたのだが、「いま」の日本酒と「むかし」の日本酒は少なからず違う。一番違うのは、庶民が飲む酒の多くは澄んでおらず、白く濁っていたのである。いわゆる濁酒、あるいは「どぶろく」というやつだ。このようなどぶろくは酒屋だけでなく一般庶民の家でも普通に作られていたようだが、現代では法律で禁止されている。
では清酒はいつ頃から現れたのか。10世紀の史料には「清酒」という言葉も出てくるが、これは「いま」のそれとは違って、どぶろくの上澄みくらいかと考えられている。「いま」に近い製法が確立したのは室町時代くらいの頃で、木炭によってろ過することで澄んだ酒を作るようになり、また火入れといって熱を加えることで殺菌をする手法も確立した。
「いま」、日本酒は他の酒と同じように工場で大量生産するものとなっているが、一方で昔ながらの小さな酒造での酒造りが注目されてもいる。また、世界的にも「SAKE」として再評価が進んでいるという。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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