第20回「ビール(エール)の「いま」「むかし」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

人類の友、酒

今回からしばらくは、お酒にまつわる「いま」「むかし」の話を紹介してみたい。何しろ酒は遥かな古代より人類と共にあった友だ。果物や穀物などが自然と発酵して「飲むといい気持ちになる液体」になっているのを発見したのが始まりであるという(木のウロに溜まっていた果物が……という話もある)。
古代メソポタミアやエジプトにもあった非常に古い酒が「ビール」である。麦から作るこの酒はいまでも非常に人気があって、「仕事終わりに冷たいやつをクーッと」「宴会の最初の一杯は『とりあえず生』」という人もまだまだ結構いるのではないか。
ただ、「むかし」のビールは「いま」のビールとは少なからず違ったものだった。

ビールとエール

明確に違うのは「エール」であるか「ビール」であるかだ。違いは酵母にあって、「いま」私たちが飲むビールは基本的にラガー酵母を使ったビールである。冷たくして飲み、喉越しを楽しむことが多い。
一方、「むかし」のビールはエール酵母を使ったエールがほとんどだった。ファンタジーに詳しい人なら、冒険者たちが一見してビールに見える酒を飲んでいるところを見たことがあるかもしれない。あれがエールだ。こちらは冷やさない。常温で、香りを楽しみながら飲むものだ。
また、「むかし」のビール(エール)は人々の生活に非常に密接したものだった。特に古代のバビロニアなどでは非常にドロドロとした粥にも似たビールが好まれ、「飲むパン」であったと考えられている。穀物を発酵させているのだから栄養は十分であったろう。この辺り、嗜好品としてのビールだけを意識していると見誤る。
なお、「いま」のビールへの移行は16世紀、ホップで苦味をつけることの発明が一つのきっかけになったとされる。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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