◆6回「執事」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

家を支える使用人

執事という言い方をすると、どんな人を連想するか。多くの人の場合は、貴族のような位が高い人、金持ちのそばに仕える使用人をイメージするのではないか。それも、いわゆる下働きの肉体労働者ではなく、主人の格に連れ合う貫禄や落ち着きを持つ、上級の使用人である。
これは西洋(特にイギリス)の使用人の役職名「バトラー」を翻訳するにあたって、日本において公家や武家などに使えて家の中のことを取り仕切った役職「執事」をあてたものだ。日本でのイメージの「執事」は実際にはその上級の役職「家令(ハウス・スチュアート)」と混ざっているところもある(実際、兼任することも多かったようだ)、合わせて紹介する。
執事の仕事の第一は、下級の男性使用人(フットマンと呼ばれるものが一番多い)を統括することである。家屋敷を維持するためにはその仕事が非常に多く、執事は適切に彼らに仕事を与え、コントロールしなければならない。
金銭、土地、建物といった主人の財産を管理するのは本来は家令の仕事だが、兼任している場合は当然執事の仕事になる。その点で執事の仕事は秘書的だし、実際現代の執事は秘書のように振る舞うことも多いようだ。
現代の私たちにとってイメージ通りの仕事として、主人の食事やお茶の給仕や、主人が着る服を選ぶのも執事の仕事であったという。
物語に登場させる場合は、このような点に注目することが多いだろう。つまり、主人の身の回りを全般的に管理する使用人である。現代でも貴族なら執事あるいは同種の存在を連れていておかしくないし、逆に言えば一見してふさわしくない主人の元に執事がやってきたら、そこからミスマッチのドラマが始まる。

酒蔵の管理人

一方、意外な仕事もある。主人の持つ酒類の管理は執事の仕事だった。というよりも、執事の仕事は当初この酒の管理で、その重要性から上級使用人として他の仕事もついてきた、ともいうのである。
私たちからするとちょっと困惑することもあるが、たとえばアーサー王伝説にも酒蔵長ルーカンという騎士が登場する。彼は王の側近であり、酒蔵だけでなく倉庫全体の管理者であり、また宴会を取り仕切って他国・他勢力との交渉を担当する外交者でもあった。この点でも、酒蔵の管理の意味合いが私たちとは違うのだ、ということはわかってもらえるのではないか。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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