第18回「「むかし」の保存食」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

生きるための保存食

食べ物を保存することは、人間にとって生存のために必須の行いであった。なにしろ、365日安定して食べ物を獲得するのは難しい。今日はたくさん獲物を獲得できても、それから一週間何もないかもしれない。また、季節ごとに得られる食物の種類と量が大きく変わるため、「食料が得にくい冬のために、秋に得た食料を保存する」「冬のうちにまるまると太った狩猟の獲物や家畜を捌いて加工し、一年かけて食べる」などの工夫をすることになるわけだ。
大抵の食物は放置すると腐敗し、あるいは乾燥して、食べられなくなってしまう。そこで「むかし」の人はさまざまな加工の方法を考えた。
雑菌が増えて腐敗する最大の原因は水分であるから、これを抜けばいい。そのため、肉や魚、野菜などを風にあて、干すのはほとんどあらゆる文化に見られる保存食である。実際に食べるときは水で戻したり、そのまま焼いたり、具としてスープに放り込んで煮たりする。水が抜けて軽くなるせいもあって旅の行動食にも有効であるが、長持ちさせようとするとどうしても硬くなりすぎたり味気なくなったりする。
食物から水分を取り除くための方法としては、塩漬けもよく用いられた。浸透圧で水が吸い出されるのだ。砂糖などでも同じことができる(果物の砂糖漬けなどはある)のだが、味、そして何よりも価格の問題から、塩がよく使われた。これもやっぱり食べる前には塩抜きが必要になることが多い。また、塩でつけた肉や魚を、木を燃やした煙で燻すと、更に保存性が高まり、味も豊かになる。いわゆる燻製だ。

他にもさまざまな保存食

水分を飛ばすだけが保存食の作り方ではない。雑菌の繁殖を防ぐために食物を酸性にする……そのために酢漬けにするのもよく見られるやり方だ。また、菌に対するには菌だ……ということで、発酵食品も保存食としてよく利用される。牛乳をチーズやヨーグルトにしたり、キャベツをザワークラウトにしたり、といった具合だ。
「むかし」の人々は経験から、あるいは代々受け継ぐ形でそれらの保存食の作り方を知っていた。それは基本的には生きるためのすべであったが、場合によってはその地域の特産物的な位置付けになったりもした。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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