第16回「旅先にホテルがあるとは限らない」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

泊まる場所には困らない「いま」

「いま」、私たちが旅をして「そろそろ夜だから寝床を確保しなきゃ」となったとき、「そこらで野宿しよう」と考える人はあまりいないはずだ。また、キャンプ場などでテントを立てて泊まることはあっても、「この辺で適当なところにテントを立てられそうなところを探そう」ともあまりならないだろう。
 なぜなら、たいていの町には専門の宿泊施設があるからだ。その種類も多様である。観光のための旅館やホテル、より規模が小さい民宿、あくまで寝泊まりがメインで観光色の薄いビジネスホテル、さらにはウィークリーマンションのような短期的なマンションまでが宿泊施設として使われる。繁忙期の観光地や大規模イベント時などを除き、「泊まる場所がどこにもない!」というのは「いま」あまりないはずだ。

人の通う場所なら宿泊施設はあった

 しかし「むかし」はそうではなかった。特に、旅人がほとんどやって来ないような村落では、基本的に宿泊のための施設は見られない。必要がないからだ。また、「異邦人がやってきたら歓待する」という文化もあちこちで見られるので、旅人は村長の屋敷を訪ねれば泊めてくれる、という事情もある。宿はいらない、というわけである。
 もちろん、「むかし」であっても人の行き来が多いし都市や、街道沿いの村などでは、宿泊施設が必要になる。たとえば、キャラバン(隊商)がたびたびやってくるような都市には、キャラバンサライ(隊商宿)という専門の宿泊施設が設置されているものだ。また、一階が酒場(時に集会所や雑貨屋)で二階が宿屋というスタイルの宿泊施設もポピュラーであった。サービス業としての宿泊施設ではなくとも、道沿いに無人の建物が点在していて、旅行者たちが整備しながら共用で使用するケースもあった。
 また、公立の宿泊施設が街道沿いに設置されるケースも多い。それらはしばしば「駅」と呼ばれ、第一には役人や軍人の移動のためのものであったが、民間人も使えたようだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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