◇13回「追放もの」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

「なろう」で話題

  これは近年、「なろう」などのウェブ小説サイトで注目された物語パターンだ。
 大まかには復讐・復権もののバリエーションで、主人公がパーティーやギルドなどチーム・集団から追放されるところから始まる。追放は主人公の能力や才能が誤解により低く見積もられたことが原因であったり、感情的な対立や陰謀に巻き込まれた結果であったりする。追放された主人公はそれまでとは違う環境(物理的に遠くへ行くこともあれば、あくまで同じ場所で再出発することもある)でやり直すことになる。
 ここで直接的な復讐に取り掛かるのが古典的なパターンだが、近年の物語では必ずしも復讐はしない。主人公が新しい生活に取り掛かる(その中で眠っていた能力が目覚めたり、それまで生かされなかったパワーが評価されたりする)中で元の仲間たちに深刻な問題が発生する……というのがよく見るパターンだ。つまりちょっと下品な物言いをすれば「俺の真の能力を評価してほしい」「俺を馬鹿にした連中が没落してほしいが直接手を下すのは気分が良くない」というわけで、人間の欲望に忠実なパターンと言えよう。
 このような背景から、追放ものは現代的な流行だ、と見られることがしばしばある。ただ、これは「現代の若者が軟弱だから云々」というよりは、単にそれまでの復讐ものを経由して発明された物語パターンが多くの読者の欲望を刺激するものだったから流行が生まれた、と考えるべきであろう。

インパクトのある展開

 背景にある欲望はともかく、追放ものは基本的には復讐もの、復権もののバリエーションと考えるべきであろう。追放されたということで主人公の立場は同情されるべきものとなり、どん底に落ちて上がっていくだけということで前向きかつまっすぐな話になりやすい。追放したかつての仲間たちを憎む展開ならいよいよシンプルなストーリーになるし、逆に「それでも憎む気にはなれない」であれば主人公のキャラ性が立つ。追放から始まるのはインパクトのある展開でもあるし、いろいろ便利なストーリーパターンと言って良いだろう。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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