身近な問題、それが町おこし
現代日本の問題のひとつが、地方の疲弊だ。人口や資金、仕事が東京のような大都会に集中した結果、地方には老人が残るばかりで各地に限界集落が生まれている。またいわゆる都会であっても、特徴のない町では人が集まらず、観光客も来ず、さらには「大規模なショッピングセンターが近隣にできて商店街に人が来ず、シャッター街ばかりに」などということにもなる。このような地方の疲弊の話が各種ニュースで語られるようになってもう長い。
とはいえ、地方の人々やシャッター街の住人たちも、必ずしも座して死を選びはしない。そこで「町おこし」があちこちで行われることになる。もしあなたが地方、あるいは都会でもあまり発展していない地域を舞台に物語を作ろうとするとき、この町おこしというテーマは非常に重要なものになる。そのくらい、今は日本中で町おこしが求められているのだ。
町おこしの手段といえば
具体的には何をもって町おこしをするのか。
最もわかりやすいのは知名度上昇で、忘れられた伝説や民話を掘り起こしたり、UMAや妖怪の目撃談をネタにしたり、町出身の偉人や有名人を持ち上げたりする。芸能人や作家が「ふるさと大使」に任命されるのもよくある話だ。萌えキャラを作ったり、YouTuber活動をやってみたり、も定番である。
これと関係して、人を集められる施設ができれば町おこしの重要な武器になる。テーマパークだったり、新鮮な食材を売る道の駅だったり、博物館だったり、そして温泉だったり。これらがうまく行けば観光地になれ、人が集まってお金も回る。
近年では移住者を増やす試みもかなり熱心に行われるようになった。人がいなくなれば町おこしもなにもないし、逆に言えば人が増えればその町で回るお金も、働く人も増えるからだ。そのためには税金の免除だったり、各種支援の充実だったりが行われるが、なかなか根付かないケースも多いようだ。
これらの町おこしは役所が主導だったり、町内会や青年団など地元の人々が活動したりするが、視野が狭くてうまく行かないケースも非常に多い。かといってコンサルタントを雇ったりするとまた怪しげな人が来たりして、現実だと大変だが物語なら面白い……。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。