◇6回「死後の顕彰」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

偉大な死者を讃えよ

前項でもちょっと触れたが、人は死んでそれで終わりとは限らない。死んだ当人もあの世での生活があったり、山の上や隣の島からこっちを見守っていたり、転生して別人としてこちらの世界に帰ってきたりする。
一方、残された人々はどうか。家族なら墓を建て、区切りごとに祈りや捧げ物を捧げるという習慣が世界的に見られる(墓を作らない文化もある)。友人なら時々思い出すこともあろう。全く縁がなければ、あるいは嫌っていればすぐに忘れてしまう可能性が高い。
一方で、その人が偉大な業績を果たしたならば、彼あるいは彼女の物語はそこで終わりとは限らない。むしろ死んでから全てが始まるかもしれない……つまり、地域や組織、国家にとって重大な働きをした人は時に死後こそ業績を顕彰され、大いにその名を語られることがしばしばあるのだ。
たとえば、広場に「偉大な王」「この国を救った英雄」の銅像が立つのかもしれない。吟遊詩人たちが盛んに彼の歌を作り、あちこちで歌い出すのかもしれない。彼の冒険をモチーフにした物語が語られるようになるのかもしれない。
建物や広場、道や地域、船などに名前が冠せられるケースもよくある。また、自分の子供に偉人の名前の一部あるいは全部を取ってつける風習も各地で見られる。それは偉大な人物にあやかろうということであったり、親愛や崇敬の心を示すものであったりするようだ。
最もスケールの大きい顕彰は「星座にする」であろう。ギリシャ神話ではしばしば、偉大な英雄や神話の中の物事を星座にしてその栄光をとどめる。それは神話を作った人間の視点としては先述したようなあやかりや崇敬の心から来ているわけだが、神話という物語の中では時に神が英雄の行いを認めて「死後、星座にする」ことがある。なんとも壮大な顕彰である。

死んでから尊敬される?

面白いもので、ここまで紹介してきた顕彰は生きているうちに行われることも多いが、死後最も盛んになるというケースもしばしば見られるのだ。この辺不思議なものだが、日本人には「死者は責めない」という文化もあるし、死んでいなくなることで些細な欠点が目に入らなくなるということもあるのだろう。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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