死体を見つけてしまった
現代社会で生きていると、ある程度以上の大きさの生き物の「死」に遭遇することはあまりない。だが、ゼロではない。命が失せ、魂の抜けた亡骸を見つけてしまったとき、私たちはどうしたらいいのか。
路上や自室で倒れ、動かない人を見つけたら、基本的には別項で紹介したような心肺蘇生の手順を取りつつ救急車を呼ぶことになる。しかし、それは蘇生の可能性があるケースだ。すでに明らかに死んでいたり、腐敗が始まっていたりしたら、どうにもならない。この時に電話するべきは119ではなく110、つまり警察を呼ぶのである。
警察が到着すると、すぐに現場検証が始まるだろう。屋外ではなく自室での孤独死をうっかり見つけてしまった……という場合は家宅捜索も行われるから、警察以外は立ち入れなくなる。
あなたが遺族なら、現場検証・検死後に連絡が来て、遺体を受け渡しすることになる。その後は通常の葬儀を行うことになるわけだ。一方、あなたが全くの無関係でただ見つけただけなら、警察を呼んで証言した段階でほぼ役目は終わりだ――その死について何かしら責任があるのではないかと疑われない限りは。
動物の死骸なら
もうちょっと起きそうなトラブルとしては、路上で動物の死骸を見つけてしまうケースがある。犬や猫などが車に轢かれるケースはままあるようだ。
物語的には適切な場所に埋葬してあげる……というのが美的な情景ではあるが、現代社会的な正解は別にある。それをちょっとご紹介したい。
本項執筆者も、実は一度アスファルトの上に倒れている猫を見たことがある。最初は寝ているのかと思ったのだが、近づくと血の色が見え、また動いていないようなので死んでいるのだろうとわかった。匂いは特にしなかったが、何らかの病気を持っていたり、腐敗して毒素が出るという可能性も頭をよぎったので、触らなかった。
このようなケースでは当局に連絡して処理・清掃をしてもらうことになる。執筆者のケースでは市内を普通に歩いていた時だったので、市の担当者に連絡をした。これが車で道を移動しているときの場合は#9910に電話をすると、その道の管理者につながるので事情を話せば良い。
ただ動物の死骸を見つけただけの場合、やるべきことはここまでだ。立ち会いを求められることも基本的にはないはずなので、立ち去れば良い。しかし、最後に手を合わせたり祈ったりするかどうかは、その人間性や優しさを示す描写になる。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。