「上」の生徒たち
学校は普通、複数年通う場所だ。専門学校や職業訓練に関係する学校などは短いことも多いが、それでも二年は学ぶケースがほとんどだ。となると、たいていの場合上級生、いわゆる「先輩」がすぐ近くの場所で学んでいることになる。
大人になるとそうでもないが、少なくとも10代の間は1歳2歳の差が大きい。肉体的、精神的、技術的、知識的に多くの場合「先輩のほうが上」であろう。少々の個人差は塗りつぶせるくらいの差がある(もちろん、上級生など相手にしない能力を持った後輩も珍しくはないのだけれど)。
そうするとどういうことになるかというと、後輩にとって先輩は「すごく大人」に見えがちなのだ。頼りになるひと、何でも知っているひと、無理無茶をお願いしても大丈夫なひと――そう見えることがある。
しかし、実際のところほとんどの上級生は1年か2年年をとっただけの子供だ。できることとできないことがあり、未熟な部分がある。逃げ出したくなることもある。頼りになるはずだった上級生が弱みをつかれて相手側に裏切るような展開もある種の王道といえるだろう。
そのような弱いところを好んで見せるかどうかは上級生個人のパーソナリティによる。気にせず見せる人もいるし、後輩の前では意地を張りたい人もいる。このあたりはあなたが先輩キャラクターを描写するに当たって工夫のしどころであろう。
基本、必ずいなくなる人
そうそう、「先輩は基本的に先にいなくなる」というのも物語上で重要なポイントだ(留年するケースもあるが、その場合は上級生としてはいなくなるということで……)。強い思いを向けていたのに気づかぬまま(あるいは気づいていてかわされて)先輩はいなくなってしまうのかもしれない。何度も勝負を仕掛けて、ついに勝ち逃げされるのかもしれないし、後輩に負けることで先輩は気持ちよく卒業できるのかもしれない。先輩がやろうとしたことを後輩が受け継ぐのかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。