通報せよ!
普通に生きていて死体に遭遇することはめったに無いが、犯罪に遭遇することはあるかもしれない。それも、他者が犯罪に巻き込まれようとしていたとき、どう行動するのが正しいのだろうか?
善良な市民の義務であり、また賢明な行動とされるのは「通報する」ことだ。日本なら110番に電話すれば良い。特に近年はほとんどの人が携帯電話、スマートフォンを持っているから、通報は以前より遥かに容易になった。ちなみに、公衆電話からでも110番(及び119番)は無料でかけられるし、他人のスマホでロックが解除でなくてもかけられたりする。
通報した際にはまず「何が起きているか」「いまどこにいるか」をはっきり言いたい(自分も危機にさらされる場合には小さな声でも仕方がない)。電話をとっているのは警察の専門オペレーターで、その通報内容にあわせて適切に質問をしてくれるので答えればいい。また、位置情報についてはスマートフォンなら警察側が探知できる。
警察が駆けつけるまでにどうすればいいのかはケースバイケースだ。通報したことをアピールして犯人が逃げるように仕向けるのか、それともじっとしているのか。危険な犯人を刺激することを避けたとしても、決して愚かな行動とはいえない。警察が到着したら身振りなどで位置を示し、あとは警察官に任せる……それが善良な市民というものだ。
常人逮捕とは?
一方、そのキャラクターに強い正義感があったり、己の腕っぷしを試したいという欲求があったならば、通報せず(あるいは通報した後に)犯罪者を取り押さえるという行動に出る可能性も十分ある。非常に危険な行為であり、もしそれだけの戦闘力があったとしてもやりすぎれば過剰防衛になり、リアルに考えれば決して賢明な行動とはいえないが、キャラクター付けとしては十分ありえる。
このとき、人によっては「警察官でなければ犯罪者に殴りかかっても逮捕できないから意味がないのではないか」と思うかもしれない。しかし、実際には現行犯に限り、つまり犯罪行為が明白である場合に限り、一般市民であっても取り押さえ、逮捕することが許されるのだ。これを常人逮捕(私人逮捕)という。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。