第45回「同級生・同学年」

榎本海月の連載

身近な仲間たち

今回からしばらくは、学園において主人公・視点キャラクターと関わっていくことになるだろう学生・生徒たちのあり方についていくつかのパターンに分けて紹介したい。
まずは同級生・同学年だ。同じ学年、同じクラスの生徒というわけで、会う機会が非常に多い相手である。同じ時間と場所を共有するという点では、一年限定とはいえ親よりも長くなるかもしれない。
結果、同じクラスではしばしば仲間意識、連帯感が生まれる。あまり親しくない相手でもなんとなくは把握して、もしかしたらちょっとした癖は知っているかもしれない。
「誰かが危機に陥ったとき、見ず知らずでは見捨ててもクラスメイトはついかばってしまう」「夜の街を歩いていたら同学年の知らない生徒を見かけて、ついつい追いかけてしまう(そして事件に巻き込まれる)」なんてことも、いかにもありそうだ。
とはいえ、日本の学校はひとクラスが3-40人は当たり前。親しくない同級生、ましてや別のクラスの生徒になると、「顔は知っている」「名前は聞いた覚えがある」くらいになってしまうことも多いだろう。特に目立った優等生や人気者、嫌われ者や乱暴者などのことは知っていても、ほかは記憶に残らない――ましてや卒業後は! といったところだろう。

距離が近いからこそ

繰り返すが、同級生、同学年はどうしても同じ時間と場所を共有することになる。結果、距離が近づくと、友情や恋愛といった強い関係を結ぶ確率がぐっと上がる。
しかし、距離を近づけるというのはプラス方向の関係性だけを呼び覚ますとは限らない。近づいてしまうからこそ、「気に食わない相手」「許せない相手」「傷つけたい相手」が出てきてしまう……険悪・対立関係、さらにはいわゆる「いじめ」はこのようなメカニズムから生まれるのだと考えられる。学校生活は広いとはいえない空間の中に未熟な子どもたちを詰め込むのだから、ある種の共食いのように互いを傷つけ合う現象を起こすのはある種当然とも言える。
また、距離が近くて知っているはずの相手「だからこそ」というのも魅力的な展開だ。地味なクラスメートが、暴君の如きいじめっ子が、親友と思っていた相手が、実は全く違う顔を隠していたと知ったとき、ドラマは急激に回転を始める。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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