♠44回「国を動かすような役人になる!」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

役人は国家の主役か?

政治を動かすのは政治家だが、実は(少なくとも現代の民主主義では)政治家ができることには限界がある。つまり、議会における多数決に勝たなければ法律一つ作れないし、総理大臣にまで出世しても国を好き勝手動かせるわけではない。アメリカの大統領は日本のそれよりも動かせる範囲が大きいが、その大統領たるトランプ氏も明らかに国を自由にはできていない。
その点で言えば、国家を真に動かしているのは役人・官僚だ、ということができるだろう。政治家が実現するアイディア、法律、方針はしばしば役人の働きかけや役人が語るところの「今の世の中はこういう風になっています」という状況認識に支えられているところがあるからだ。
では、どうしたらそのような社会を動かすような役人になれるのだろうか。一口に「役人」といっても多種多様だ。そもそも役所で働いている人の中には公務員(=役人)以外にも多数の契約社員、派遣社員がいるもの。公務員の中でも「どんな試験を受けて入ったか」で明確な分け方がされており、課長より先に進めるのは一種試験に合格した「キャリア」だけだ。
あなたが役人として国を動かしたいなら、この試験に合格しなければならない。東大京大はじめ旧帝大系がゴロゴロする世界の話である。国を動かすような役人というのは自然と超エリートになるわけで、それは彼らの能力やプライドの源になる一方で、世間知らずだと批判される原因にもなっている。

キャリアの過酷な出世レース

それだけではない。キャリアたちは各省庁に割り振られて出世レースを走るわけだが、「俺は出世には負けたけどこの役所でのんびり生きていくよ」というわけにはいかないのである。彼らは出世するごとにその数を減らし、負けたものは役所を去る(その際民間企業に所属するだけならいいが、後輩役人たちに働きかけて利益誘導することがあるので「天下り」として問題視されている)。
ピラミッドが上に行くにつれて狭くなるように同期が減り、頂点の「事務次官」になるのはたった一人だ。この事務次官はその省庁の役人におけるトップであり、大臣さえも疎かにはできない……ここまでいけば、「国を動かせる役人」といえようか。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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